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2008年5月27日 (火)

もう菌マイナスだけ返せない、あなたのために

膿胸です。誤嚥がこじれたりして、入院を余儀なくされる方も多いですが、老人施設などでこじらせた場合は、市中肺炎にはならないという教育を当院でしています。かかりつけ医で抗菌薬を処方して、治癒できない場合も散見されます。おっと困ったのは検査室。胸水引いたらドロドロ、スメアで何か情報を・・・と言われても抗菌薬が入っています。こういう場合ですが、見えた時は①MRSA②耐性グラム陰性桿菌③結核などでしょうか?でも、背景を確認することで、その炎症が、今どういうステージであるのか把握出来る場合があります。抗菌薬の前投与があるか、無いか情報ない場合でも有用でしょう。

こういったスメアはどうしましょう?もう、『菌マイナス』のみなんて言わせませんよ。

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背景など病態把握」カテゴリの記事

コメント

好中球は散見されますが,その核の不鮮明さ,細胞全体の輪郭のぼやけた感じ(雰囲気で表現してしまいすいません)が慢性炎症というか,急性期を過ぎてだいぶ時間が経っている様子を思わせます。
高倍率の写真では,おそらく炎症細胞の残骸と考えられるもやもやした物質が見られています。
ちなみについ最近僕が経験した症例で,今回のテーマに若干関係のあることがありました。直接の主治医ではありませんでしたが,今まわっている同じ科に誤嚥性肺炎にて入院加療していた方(喉頭摘出後で気道が頚部前面から露出しており,人工声帯という異物も入っています)が,全身状態もよく,画像上も,さらにCRP,WBCという評価に用いるべきではないといわれているパラメータが改善(?)したということで退院されました。研修医どうしで勉強の為と思い,毎日痰のグラム染色を病棟でやってみていました。抗菌薬治療していたので細菌は確認されなかったのですが,明らかに新鮮な好中球がうようよ存在して急性期の炎症像バリバリの状態でした。指導医にも相談しましたが,結局上記したパラメータなどが改善していて問題ないということで退院されましたが,退院前日まで同じようなグラム染色像でした。その後10日ぐらいして,(僕の中では案の定ですが)今度は皮下膿瘍という形で再入院となりました。
細菌は見えないけど,抗菌薬治療中にもかかわらず好中球という炎症初期に見られる細胞がうようよしていたら,全身状態などがよくても身構えてちゃんと治療しなければならないなと思いました。
だらだら書いてしまいましたが,何かの参考になればと思って書き込ませて頂きました。

ちなみに,これに乗じてお聞きしたいのですが,嫌気ポーターというものは膿瘍等嫌気性菌を確実に検出したいときに使うものと理解しておりますが,好気性菌に関しては嫌気ポーターを使うことで検出率が落ちるということはないのでしょうか?うちの病院の微生物検査室で聞いたら,安心してくださいとのことでしたが・・・自分で調べてもよく分からなかったので・・・

投稿: highgear | 2008年5月29日 (木) 07時11分

嫌気ポーターの件ですが、単にCO2が充填されているだけのものです。溶存酸素を減らすことで、嫌気性菌の死滅を遅らせる働きがあります。私たちが目的として培養検査で検出する好気性菌というものは、殆どが通性嫌気性菌と言って、好気・嫌気どちらでも繁殖が出来るタイプのものが多いです。なので、嫌気ポーターの影響を受けない状態です。また、採取容器は分ける必要は無く、嫌気性菌の培養は好気のマルメ検査になるので、好気をすること前提に検査します。嫌気ポーターで影響受けそうな菌は、緑膿菌くらいなものですが、培養検査に影響があるくらいのものではないと思いますので、安心してくださいと言われたのじゃないですか?疑問があれば、とことん聞いてあげて良いと思いますよ。結構Mの人が多いと思いますので。(私見)

投稿: 師範手前 | 2008年5月29日 (木) 22時09分

丁寧な解説いつもありがとうございます。
これでまた一つなぞが解けました。

投稿: highgear | 2008年5月29日 (木) 22時58分

ちょうど同じような状況の検体を今日顕微鏡で見た所です。投薬中(投薬後3日目と言われました)だが、まだ嫌気性菌を疑うような膿性の検体が出てくる・・と、嫌気ポータで持って来られました。今回の写真と同様でした。好中球の核や細胞質が鮮明でなく、慢性的な様子が伺え、しかも菌は見えない・・とだけ伝えました。実際の所、臨床はどんな情報が欲しかったのか・・気持ちがすっきりしません。菌マイナス・・以外にどんな事が言えたのでしょうか?!是非ご指導ください!お願いします。

投稿: かなぶん | 2008年5月30日 (金) 00時22分

>背景を確認することで、その炎症が、今どういうステージであるのか把握出来る場合があります・・・抗菌薬の前投与があるか、無いか情報ない場合でも有用でしょう。

細胞は以前として、多数認められていますが、核のきれいな白血球は少なそうです。また、細菌類も認められないのでしょうか?弱拡大で左上部あたりに観られているような、haloを認めるグラム陰性球桿菌のようにも観えますが?
このスメア細菌を認めないという前提で考えていけることは、やや炎症は落ち着いてきている像のように伺えられます。患者さんの状態を考慮し、必要ならもう少しでキュレタージュや洗浄が可能な状態と考えます。
ドレナージ用チューブは、膿の粘性やフィブリンなどにより閉塞しやすい、そういった情報もスメアから見て取れるかもしれません。

膿胸は抗菌薬だけでは治療しにくい、また膿胸が進行、炎症の強い膿胸では、膿胸腔の多房化の危険性もあり、ドレナージのみでは治療できない事もありますね。

投稿: 倉敷太郎 | 2008年5月31日 (土) 11時24分

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