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2008年4月30日 (水)

切れが悪いと言われそうな肺炎です

81歳男性。交通外傷のため他院で3ヶ月前に入院。以後退院したが、脳挫傷の後遺症にて、麻痺が少し残りました。リハビリ病院へ転院し、リハビリを継続していましたが、今回、経管栄養の勧めもあり、入院になりました。経鼻チューブを持続的に挿入しています。やや誤嚥気味もあり、肺レントゲン所見で、右下肺野に少し胸水が貯留しているようです。アルブミンは1.2g/dlでやや、栄養状態は悪い状況です。栄養剤の誤嚥もありそうで、汚い褐色の痰が採れました。とりあえず肺炎の治療を開始しました。定番となりつつある、ABPC/SBT6g分2/日で開始しようと思い、『今日から、肺炎なのでABPC/SBTを開始しようと思うのですが・・・』と相談です。良くあるパターンです。『とりあえず、スメア見て判断してみませんか?』と直ぐに採痰し、グラム染色しました。さあ、初期治療、ICTなら何を勧めますか?

カルバペネム?ICTならもう少しクレバーに行きませんか?

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コメント

かなり間が開いてしまいましたが、久しぶりのチャレンジです。お手柔らかに(まさに道場??)。

患者背景からの予想はNGチューブ関連の副鼻腔炎、栄養剤誤嚥に伴う化学性肺臓炎、あるかもしれない嚥下性肺炎、長期伏床で肺血栓塞栓、病因不明の(たまに胸膜炎だったりする)胸水、といったところでしょうか。

その目で喀痰?!のスメアを見ると、扁平上皮細胞ばかりに目が奪われてしまいます。多核球はあまりなさそうに見えます。肺に影があるからって、これで細菌による肺炎??と疑問に思ってしまいます。強拡では比較的性状の似通ったグラム陰性桿菌と、ハの字状に見えるグラム陽性桿菌が見えます。前者は腸内細菌を、後者はコリネバクテリウムを疑います。

ICTだとして返答するなら「細菌性肺炎かどうか、もう一度臨床的に評価しなおして下さい。手始めに胸水の病因を特定されては?」などと返答すると思います。抗菌薬以前の問題かと。

投稿: 勤ノ字 | 2008年4月30日 (水) 21時11分

勤の字さま
早速のコメントありがとうございます。
肺炎かどうかの判断難しいですよね?特に経鼻栄養の方は、むせが多いし、誤嚥は酷いし。Mチューブを挿入するかの評価が最初に大切ですが、転院そうそうというのは、あれれ?ということを良く見かけるものです。肺炎に関しては、胸写やCTで確認を取るのが基本だと、専門の先生やICTからも発信しています。

なので、勤の字さまのコメントはまさにその際たるものだと思います。ありがとうございます。
で、胸水穿刺はその後ということにして、肺炎がCT上でも除外できない状況で、恐らく肺炎だろうということと仮定して今後は考えたいと思いますが。

続きですが、肺炎の治療をこの抗菌薬を投与したいという担当医師の希望についての返答を考えたいと思いますが。

投稿: 師範手前 | 2008年4月30日 (水) 21時36分

>81歳男性、脳挫傷の後遺症、経鼻チューブ持続的に挿入・・・
やや誤嚥気味、肺レントゲン所見で右下肺野に少し胸水が貯留・・・
『今日から、肺炎なのでABPC/SBTを開始しようと思うのですが・・・』

スメアからほぼ同一菌と思われるグラム陰性桿菌が多数認めれれています。菌の周りには好中球ほとんど認められません。

院内肺炎の発生に重要である定着菌の定着部位は気道と消化管。

気道の分泌物なのでしょうか?しかし、通常(健常人)の定着菌叢と違い単一多数の緑膿菌に置きかわった様相に観られます。

抗菌薬はPIPC(TAZ/PIPC)CAZ、CFPM単独ないしTOB(AMK)との併用。

投稿: 倉敷太郎 | 2008年5月 1日 (木) 09時54分

勤ノ字さま 師範手前さま

続けてコメントします。

院内肺炎の診断はそうですね市中肺炎のように簡単ではないことが多いですね。

今回の抗菌薬治療は、起因菌が緑膿菌なら、重症に移行するリスク大きいと思います。

またSBT/ABPC以外のβラクタマーゼ阻害剤でなければ効きそうにないし、グラム染色で緑膿菌が疑えれば抗緑膿菌薬に絞り込めます。 

投稿: 倉敷太郎 | 2008年5月 1日 (木) 12時40分

>恐らく肺炎だろうということと仮定して今後は考えたいと思います

ということで考えますと、以下の点がポイントになるかと

・嚥下性肺炎教科書的に言われる嫌気性のGPCだけでなく、今回のメインはあくまでGNR
・GNRがGlc発酵性/非発酵性なのか、薬剤感受性はどうなのか、は未だ結果待ち
・とはいえ、少数派でも他の視野に居るであろう嫌気性のGPCもターゲットにしておく必要がある

同定待ちの時点で、スペクトラムをどこまで広げるかは、外れた時の予後の悪さ(主に重症度)に依存するところが大きいと思います。既にショック合併症例や、呼吸不全合併症例であれば、想定されるGNR全てをフルカバーできるように(CAZ+TOB+CPFXでも構わないと思います)対応すべきでしょうし、余力があれば大腸菌か肺炎桿菌ターゲットでCEZ、翌日育ったコロニーの性状を見て軌道修正すれば良いと思います。

嫌気性のGPCを補完するために、上記のレジメンではCLDMとの併用にならざるを得ないでしょうか。その点、単剤治療としてはPIPC/TAZなどは有望ですが、不必要な超広域スペクトラム薬の乱用は出来るだけ避けたいものです。

ところで、勤ノ字はグラム染色所見のみで腸内細菌とGlc非発酵菌の区別をする能力がありません。どうやったら鍛えられるのでしょう?

投稿: 勤ノ字 | 2008年5月 2日 (金) 12時59分

勤ノ字さますみませんでした

私の菌推定方法ですが、腸内細菌とブ非発酵菌を最初から見分けることは多分難しいことと思います。

まず患者さんの情報から菌種の絞込みをします。
高齢、脳神経障害、経鼻チューブ挿入、右下肺野胸水貯留
その他、情報に無かったですが、潰瘍予防薬使用?前入院時抗菌薬の使用?などなど。

菌種の絞込みです、compromised host→日和見感染→弱毒菌。
グラム陰性桿菌の中では緑膿菌、クレブジェラ、大腸菌、セラチア、アシネトバクターあたりでしょうか?

このスメアから大腸菌と比べ、わずかに線が細い印象から緑膿菌を推定しました。
他にも菌が認められているようですが、抗菌薬のターゲットは圧倒的に多い菌種に合わせています。

投稿: 倉敷太郎 | 2008年5月 2日 (金) 15時44分

勤の字さま
>グラム染色所見のみで腸内細菌とGlc非発酵菌の区別をする能力がありません。どうやったら鍛えられるのでしょう?

頑張って数をこなして下さい。コツを少し教えます。ただし、染色がちゃんと出来ていること前提です。また、倉敷太郎さまの言う通り、患者背景は重要です。総合的に判断すると、理解倍増です。

緑膿菌・・・染色は薄く、やや丸みを帯びた桿菌で、両端が楕円状になっているのが特徴です。

アシネトとマルトフィリア・・・染色は緑膿菌と同じような薄いもので、非常に短い桿菌です。市中肺炎であればヘモフィルスと間違うこと必死です。

大腸菌・・・染色は濃く、緑膿菌と大きさは一緒ですが、両端がやや角ばった楕円です。

肺炎桿菌・・・染色は濃く、四角い桿菌で、連鎖して見る事があります。本当に正方形に見えることもあります。

勤の字さま、スメア見て、菌はしゃべってくれていますか?私には菌は『見つけて下さい!』といつも語っています。たまに嘘つきもいますが。

感染症って馬鹿だなと思うことがあります。自分が優位に立とうとすると、姿を現し、やっつけられます。姿を見せなければ良いのにと思います。結核なんかは、姿見せてくれるまで時間がかかりやらしいと思います。

投稿: 師範手前 | 2008年5月 2日 (金) 20時36分

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