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2008年2月 6日 (水)

インプラント挿入の患者から出た膿瘍

先日、大腿骨頭の置換術で手術した患者が歩行困難ということで来院されました。手術は聞くところ4年前だそうです。関節液を穿刺して提出してきましたが、主治医は『何菌ですか?』といつものように尋ねてきました。どうやら、いつも菌名や結晶成分の有無を迅速に報告している効果が出ているのか、塗抹依存診療科のようです。良いことです。

特に整形外科の領域では、抗菌薬投与する前に、塗抹で起炎菌を絞り抗菌薬の選択をすることが必要になってくると各種ガイドラインにも記載されています。日本のガイドラインにははっきりと書かれていないように思いますが、サンフォードガイドなどの米国のガイドラインにははっきり書かれています。でも、検査技師もそのようなガイドラインに積極的にグラム染色をしましょうと記載があるのは知っていない事項なのでしょうね。

でも、今回は究極です。グラム染色の結果から『ぶどう球菌』ですと言ってみたものの、インプラントが埋め込んでいるので、CNSか黄色ぶどう球菌かどちらなのでしょうか?判別出切れば良いのですが。

いつも見ていると、黄色ぶどう球菌はCNSに比べやや小さい気がしますが、皆さんどうでしょうか?私はいつもそう思って鑑別していますが、結構正解します。でも主治医はその次、つまり『MRSAかな?』と言っていました。さすがに解りませんと思いましたが、地に足付けて考え直しました。

①術後時間が経過していること

②黄色ぶどう球菌は確信できること。

③市中感染が濃厚ですが、創傷などはまったくないこと

などを考えて、MSSAの可能性が高いと感じました。

が・・・、さすがに耐性菌かどうかの判定は難しいと思います。でも黄色ぶどう球菌と判別出来るだけでも進歩している感じがします。スメア掲載します。

少し、私的に判読しますと、新鮮な白血球が多数あり、非常に炎症反応が進んでいる状況と急性発症の可能性が高いと思われます。また、好中球に混じって単球が見えていますが、単球の数が少し多いかな?と思う反面、強拡大からは単球に貪食されたぶどう状の菌が見えます。ぶどう状の菌はくっきりと大小不同があまりなく、しっかりと染色されやや小型であるので、黄色ぶどう球菌を示唆します。今回は、このような判読から、黄色ぶどう球菌の人工関節に発生した関節炎と感じます。

黄色ぶどう球菌です。感じ取って下さい。結局MSSAで、ずばり正解しました。

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グラム陽性菌」カテゴリの記事

コメント

こんにちは.
MSSAの正解,さすがですね!日頃の修行の成果ですね.
さて,このようなケースは私たちも時々経験するわけですが,いつも「手術から4年もたってて,目立った外傷もないのにブドウ球菌?」と思うわけです.この菌はいったいどこから入ったのか?
手術時に入った菌が,ずっと潜んでたのでしょうか?それとも,一時的な菌血症が起こって,くっついたのでしょうか?時々経験するのは,関節注射をしていた,というやつですね.これなら理解できます.
大腿部なら,鼠径部に近いので,なんとなく腸球菌が多いような気もします.
いずれにせよ,慢性の骨髄炎であれば,1日抗菌薬が遅れても,予後に影響するわけではないでしょうから,感受性をまってから抗菌薬を開始するでしょうし,急ぐようであればどうせ抗MRSA薬を使うかな...
こんなことを言っているから,いつまでも修行ができないのですが...

投稿: ID conference 管理人 | 2008年2月 9日 (土) 20時49分

ID conference 管理人さま
コメントありがとうございます。
関節炎におけるグラム染色の有用性については、おっしゃるように保存治療が可能であれば、感受性検査を待ってからで良いと思われます。また、empric治療もそうです。でも、検査に出てくる場合はempric治療をしても改善ないことが多いように感じます。最後の手段?のように感じますが、整形領域の感染症については、中々感染症診療の見方についての意識が薄いのかテキストどおりの手順でないことが多いです。やはり、関節の位置、病因などを総合的に判断して、起炎菌を決定することが重要に思います。その中でのグラム染色は有用ですが、本当のところどうなんでしょうか?と良く思います。でも、スメアで菌が判るのは今の本邦の感染症事情を考慮すると良いことなのでしょうね。
市中のブドウ球菌感染症ですので、黄色ブドウ球菌であればMSSAと言えば7-8割は当たりますよ。でも、色々な患者情報がないと7割が9割に確率があがることはないと思いますので、やはり、臨床とのコミュニケーションが大切でしょう。

投稿: 師範手前 | 2008年2月11日 (月) 23時58分

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