感受性結果の参照について・・・注射薬?経口薬?
たまにこんな質問頂きます。COPDと肺アスペルギルス症などの呼吸器疾患を基礎疾患に持つ患者で、たまに肺炎を起こして来院されます。とりあえず、診察をして入院決定になり、市中肺炎で緑膿菌のリスクもないのでABPC/SBTの点滴で治療します。グラム染色をすると以下のようなスメアが見られます。5日程度で軽快するので退院になりますが、退院時にSBTPC(ABPC/SBTの経口プロドラッグ)をそのまま処方され軽快します。
で、暫くすると呼吸器症状が悪くなってきたと言って診察されます。軽症の肺炎ということで、外来でABPC/SBTを点滴され、SBTPCを持って帰ります。でも、軽快することなく入院になる場合もあります。
さて、この場合の検討事項ですが、以下のものが挙げられるのではないでしょうか?
①2菌種の合併である
②ABPC/SBTでは軽快するが、同じ構造式を持ったSBTPCでは再燃する
③感受性成績はABPC/SBTのみの表記になるが、ABPC/SBTは注射、SBTPCは経口投与
などです。市中肺炎のガイドラインやPK/PD理論では、上記の起炎菌であればABPC/SBTで問題ないかと思いますが、問題が生じる結果になることが良く起こりうる状況ではないでしょうか?
結局、ICTで説明したのは
・入院するなら、ABPC/SBTで良いでしょうが、同じβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンは感受性良くても、経口では状態によりフォロー出来ない場合がある。
・そういう場合は、レスピラトリーキノロン(MFLXやGRNXなど)に頼る必要がある。
でもやっぱり思うのは、十分に効果的に行う上で必要なのはグラム染色だと思います。皆さんのところもこんな症例多いでしょう?
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コメント
こんにちは.
SBTPC錠の375mg錠は,アンピシリンが250mgしか入っていない(間違ってたらごめんなさい)ので,SBT/ABPC注(アンピシリンが1000mg)と比べると,とんでもなく低い量になることに注意です.
たとえばユナシン注を3.0g×2回つかっていた患者が,突然ユナシン錠3錠分3になると,アンピシリン量で4g→0.75g(なんと1/5.3)になります.これでは病状が悪化するのも当然ですよね.
投稿: ID conference管理人 | 2008年2月16日 (土) 15時50分
ID conference管理人さま
見事です。的確なコメントありがとうございます。
感受性結果は全てABPC/SBTになるというアヤがあります。経口と注射で構造式が変わらない場合の結果解釈は、良く知らないと『この薬効かないやん!』って言うことも良く見かけます。
いつも思うのですが、ペニシリナーゼ産生菌にABPC/SBT注でも少し切れが悪いかな?と思うことがあるのですがどうでしょうか?
投稿: 師範手前 | 2008年2月18日 (月) 21時37分