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2008年2月29日 (金)

学会の内容聞けなかった人へ その3

その3です。

起炎菌の推定もグラム染色で着き、培養にてCNSが予想通り発育してきました。

現場で求められることは、患者の治療という意味では起炎菌の種類と抗菌薬の選択でしょう。これは、ある程度菌検査をすれば予測出来ますが、その病院のローカルファクターはどうでしょうか?

アンチバイオグラムは?CVカテーテル感染の感染率は?CVカテーテル感染の場合の死亡率は?CVカテーテルは基本どおり抜去しないといけないの?など考えますよね?そのために必要なのは血液培養サーベイランスであり、BSIサーベイランスでしょう。BSIサーベイランスは感染率が優位に高い値であると、何かカテーテルの管理に問題がある。血液培養サーベイランスでCNSが多い(大体30%以上)はカテーテルの管理に加え、採取時の消毒方法が悪いなどということが判ります。ちゃんと採取することは、不必要な治療を無くすだけでなく、無駄に出費する経費や医療資源の節約にも繋がります。無駄な治療費は1人当たり4400ドルだったという報告もあります。

塗抹検査一つで凄い介入が可能になる。なんてグラム染色は有用なんでしょうか?と考える毎日です。でも皆さん、こんなアウトカムを考えて検査出来ているでしょうか?

20 うちのデータです。2006年の半期分になります。CNSが少なく良好です?黄色ぶ菌は殆ど感染症(関節炎、肺炎、腎盂腎炎など)になりますし、腸内細菌が多いです。カンジダは殆ど出ません。

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2008年2月28日 (木)

学会の内容聞けなかった人へ その2

では、あのようにグラム染色で陽性球菌が見えた時のお話です。

報告はどのようにしていますか?

①グラム陽性球菌が見えました

②グラム陽性球菌でぶどう状の菌が見えました。もしくはグラム陽性ぶどう球菌が見えました

③ぶどう球菌ですが、菌塊が確認されるのでバイオフィルムからの剥離の可能性が示唆されます。人工物挿入者ではないでしょうか?その場合はCNSが多く検出されています

④ぶどう球菌と思われますが、状況が把握できないためコンタミかどうかは不明です

⑤ぶどう球菌ですが、菌がやや大きく黄色ぶどう球菌の典型像ではないのでCNSを疑います。菌塊が確認されるので、バイオフィルムからの剥離の可能性が示唆されます。人工物挿入者ではないでしょうか?その場合には一層起炎菌の可能性は高くなります。

個人のレベルで色々な受け応えが出来ると思います。私は⑤になります。

少し文献を探して見ましたが、黄色ぶどう球菌の場合ですが、ぶどう状球菌と読んで外れることが無いようです。

①の場合は、ぶどう状なのかレンサ状なのか分別して次回からチャレンジ報告してみてはどうですか?

写真は私が撮ったのではないのですが、PNA FISH法による黄色ぶどう球菌です。このようにFITC標識で染め分ければ効果的ですが、グラム染色のみで判れば高価なものは不要でしょう。スキルアップ、レベルアップ!!

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2008年2月27日 (水)

学会の内容聞けなかった人へ その1

学会ですが、一般演題と被っていたり、帰りの交通手段の都合で聞けなかった人のために少しサマライズしながら進めたいと思います。

いつもながら、ルチンをしていますと血液培養が陽性になります。塗抹をつくりグラム染色して、鏡検。で、このような像が見えるとします。

さて、この像をきっかけにして感染症の診断、感染管理面など判る範囲のことを資料やなんやらで作成すれば感染管理者としては良いものに仕上がります。

その際には必要な情報が無くてはなりません。

  医師・看護師は人工物が挿入されていることを情報提供

  臨床検査技師は人工物が挿入されていないのか?情報収集

とお互いの情報を交換する必要があります。

今回、例えば医師から汚染菌でしょうか?という問合せに対し、ICTでどのような結果を持って対応していけば良いでしょうか?仮に鎖骨下にCVカテーテルが挿入されていることを前提として進めましょう。

関係ないかもしれませんが、今回の学会でふと気付いたことがあります。プレゼン資料の多くに臨床検査技師のことが検査技師と書かれていました。やはり臨床業務が少ない職種であることが如実に出ているのでは?と寂しく感じました。これからは臨床に出る機会を増やし着実に臨床検査技師と書いてもらえるように頑張りたいと思います。え?考えすぎでしょうか?スライドのレイアウト(文字数)の問題もあるんですかね?

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速報!! グラム染色報酬改定(案)?その2

前回、保険点数改定について掲載http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_70e1.htmlしましたが、以後詳細が解ってきたので掲載します。

検体管理加算Ⅲの微生物学的検査の意味ですが

 ①グラム染色が24時間出来る事

 ②微生物学的検査がルチンで稼動している事

が条件だそうです。今回保険点数が上がる背景には、迅速に結果報告を求めることの交換条件があった模様です。詳細は正式な保険点数改定版を参照しないといけないようですので注意して下さい。~日本○床○生検査○○会からの報告

とりあえずご報告を。

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2008年2月26日 (火)

さて、耳から。何でしょう?

昨日、外来から耳漏の培養が届きました。80歳の女性です。老人で特に慢性的な症状が無いとなると、ぶどう球菌や連鎖球菌などのグラム陽性菌が主体になるのでしょうか?たまに腸内細菌も見えますよね。

今回もそのつもりで、鏡検しましたとことこんなの見えました。私はもう秒殺で判りました。

さて、なんでしょうか?意外に大きい(グラム陽性のもの)ですよね。白血球と比べてください。

ヒント:菌?の形状を良く見てください。判る人は直ぐ判りますよね。

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2008年2月25日 (月)

学会で初めてお会いした方々

無事環境感染学会は終了しました。HDDクラッシャーでどうなることかと思われたプレゼンも少し時間超過もありましたが、上手くいったかと思います。

でも、裏話ですが、開始時間を間違っていて『少し時間に余裕をもたせて・・・』と思い、行った会場は既に開始直前・・・・。危うく遅刻しそうでした。冷や冷やです。

今回の学会でも色々な人とお会いしました。ブログ愛好家の方とも初対面でしたが、激励の言葉も頂きました。また、続ける意欲が沸いてきました。

でも、思うのが本ブログの作者が何故ばれるかです。正式には非公開(謎が多い方が面白いかな?)になっていますが、初対面の方からは『いつもブログ見ています』とさらり。解りやすいのでしょうか?疑問です。また、次に多いのが『意外に年配の方を想像していました!』というリアクション。そんなに言葉おっさん臭いですかね?次回から略語辞典を購入したいものです(笑)。

何はともあれ、ブログ公開にて情報を共有出来ることは良いことと感じています。今後とも宜しくお願いします。

近日中に、英語版のグラム染色道場(A dojo stadio about the Gram stain)も公開しようと思いますが、世界にはこのような解釈している方いるんでしょうか?その次は宇宙かも?どうでしょうか?

写真は懇親会場で撮影した、長崎龍踊りの龍です。五穀豊穣って意味らいしですが・・・・。

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2008年2月20日 (水)

CAPD peritnitis その2

結局、通常の培養しても見つからず、カルチャーボトルに接種した増菌培養から2日後にこんな菌が見つかりました。抗菌薬の影響(TOB洗浄)か発育が悪いようです。平板に再接種しても倍時間かかりそうです。でもやはり、CAZは妥当なのでしょうか?この状況では判断出来ませんかね?僕は妥当と思っていますが?えっ?アンチバイオグラムはって?

話変わりますが、明後日からの環境感染学会参加します。明日は前夜祭という名の宴会に初参加です。知っている人、良ければ声を掛けてください。

それでは・・・

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2008年2月18日 (月)

CAPD peritnitis

たまにあるのが、CAPD腹膜炎です。腹膜透析の患者さんが、自宅で使用している間に何か異常を来たして、そのまま外来に来られることもあるかと思います。意外に見かけるのが、バッグが破けて応急処置で使用している場合です。

長期に自己で応急処置をしてた後に、Enterobacter cloacaeとStenoprophomonas maltophiliaの混合感染になりました。感受性検査結果も見ながらCAPD内はTOBで洗浄し、全身投与はPIPCにしました。軽快し、また悪くなりの繰り返しの間にE. cloacaeは消え、残ったのはS. maltophilia。3回目の再燃ではPIPCは感受性でしたが、TOBは見事耐性になってしまいました。で、4回目ですが、外来でTOB洗浄とPIPCの全身投与でフォローしていたのですが、良くならず、仕方なくCAPD入れ替えのため入院することになりました。で、菌検査の前に抗菌薬の選択を考えたいような状況が来ました。そこは、黄金律でしょうか?CAZの洗浄に加え、PIPCの全身投与も平行してもらいました。スメアをみてもこんな風に菌は見えません。でも、スメアは情報をくれます。どう判断しますか?

追伸:少しショックな事故が・・・・。本日愛用のPCが壊れました。環境感染学会直前というのに。発表のスライドを作り直しです。大丈夫とは思いますが、この沈んだ気持ちが立ち直れば良いのですが。バックアップとろうかな?と思っていた矢先の事故です。皆さん、ファイル管理は大切にしましょうね。

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2008年2月16日 (土)

感受性結果の参照について・・・注射薬?経口薬?

たまにこんな質問頂きます。COPDと肺アスペルギルス症などの呼吸器疾患を基礎疾患に持つ患者で、たまに肺炎を起こして来院されます。とりあえず、診察をして入院決定になり、市中肺炎で緑膿菌のリスクもないのでABPC/SBTの点滴で治療します。グラム染色をすると以下のようなスメアが見られます。5日程度で軽快するので退院になりますが、退院時にSBTPC(ABPC/SBTの経口プロドラッグ)をそのまま処方され軽快します。

で、暫くすると呼吸器症状が悪くなってきたと言って診察されます。軽症の肺炎ということで、外来でABPC/SBTを点滴され、SBTPCを持って帰ります。でも、軽快することなく入院になる場合もあります。

さて、この場合の検討事項ですが、以下のものが挙げられるのではないでしょうか?

  ①2菌種の合併である

  ②ABPC/SBTでは軽快するが、同じ構造式を持ったSBTPCでは再燃する

  ③感受性成績はABPC/SBTのみの表記になるが、ABPC/SBTは注射、SBTPCは経口投与

などです。市中肺炎のガイドラインやPK/PD理論では、上記の起炎菌であればABPC/SBTで問題ないかと思いますが、問題が生じる結果になることが良く起こりうる状況ではないでしょうか?

結局、ICTで説明したのは

  ・入院するなら、ABPC/SBTで良いでしょうが、同じβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンは感受性良くても、経口では状態によりフォロー出来ない場合がある。

  ・そういう場合は、レスピラトリーキノロン(MFLXやGRNXなど)に頼る必要がある。

でもやっぱり思うのは、十分に効果的に行う上で必要なのはグラム染色だと思います。皆さんのところもこんな症例多いでしょう?

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2008年2月15日 (金)

速報!! グラム染色報酬改定(案)?

昨日、中医強のHPを覗いていると保険点数の改定案が掲載されていました。http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/s0213-4.html

微生物学的検査の項を見ていると軒並み保険点数が上がっています。当院での微生物検査のみの診療報酬アップ率を早速検討しましたが、6%も増加になりました。喜ばしい次第です。

グラム染色も現行の17点から25点まで上がる予定です。47%もアップです。

一応、微生物の報酬のみ掲載しておきますが、全体を知りたい人は上記を参照して下さい。グラム染色万歳!!

「hoken_bacteria.pdf」をダウンロード

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2008年2月13日 (水)

オフ会?グラム染色道場

3月と5月ですが、近隣でグラム染色を主体とした感染症検査の講演会をさせて頂けることになりました。『オフ会?グラム染色道場』とでも言いましょうか?実際数例の症例について検討をしながら、院内感染対策の要素も絡めて進めていければと思います。

少しご紹介しても良いでしょうか?お近くの方は良ければ足を運んで下さい。

 ①3/25(火) 姫路感染症勉強会 イーグレひめじ セミナー室A 18:45~予定

 ②5/20(火) 神戸Infectionセミナー ホテルオークラ神戸37階? 18:30~予定

オフ会で炎上したらどうしましょう?不安で一杯です。

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2008年2月12日 (火)

あなたのお名前何て言うの?

今回は重症膵炎患者で採取された膿瘍から検出された菌です。重症膵炎時は菌の検出が難しく、特に膵臓の穿刺など非常に危険を伴うものです。膿瘍がしっかりと形成されているうちは、未だ良い方ですが、のう胞のままであると起炎菌は決まらない、グラム染色も出来ないといった悪循環になります。頼みの綱の血液培養はこの場合陽性確率が低いようで、陽性になれば良いのですが、陰性ならジレンマも一層酷くなります。陽性にならないから血液培養をしないというのはまた違う意味でマイナスです。可能性があるなら採取しましょう。

治療はグラム陰性桿菌に合わせて、カンジダが良く出るので標的治療にする必要性があるそうです。重症膵炎で困った症例で色々文献読むと書いてあります。フムフム。

で、こんな膿瘍が後から採れました。グラム陽性の球菌でやや大型⇒カンジダ?と思えます。じゃあ、FLCZが第一選択になろうかと思いますが、このスメアでは妥当でしょうか?

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心配性でしょうか?

ICTの介入どころと思っています。

最近、遭遇する感染症には膿胸や肺化膿症が多いように思います。

喀痰や胸水を採取しての鏡検をしていますが、下のような化膿病巣に良くあるスメアが見られます。まず感染症検査にとって大切な情報は臭いでしょうね。臭い場合は嫌気性菌の関与が考えられます。肺炎桿菌やミレリ菌のみの場合は臭いがしません。

下記のスメアは、白血球の縁が鮮明でなく、蛋白の集合もありやや慢性的な炎症後に発生してきた膿胸の像でしょう。歯科衛生の不良かどうかの検索も必要でしょう。

次にスメアです。思ったとおりにpolymicrobiologyが見られ、菌が予測されます。この時押さえておきたい起炎菌はKlebsiellaでしょう。特に莢膜産生株で予後はそんなに良くないので。Klebsiella以外では菌の形状からFusobacteriumやAnaerobe GPCを見つけましょう。

で、当院で問題にしているのが、この場合の抗菌薬の選択です。最近眼にするのが、β-ラクタム薬とCLDMの併用です。溶連菌などの毒素が関与している菌による感染症ではないので、CLDMの使い方について指導すべきものか検討しています。

ICTの意見としては

 ①肺化膿症や膿胸の場合は、耐性菌でなければβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンで十分

 ②CLDMはペニシリン系抗菌薬やβ-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンとスペクトルがかぶる(2剤の有効性に有意差は認めない)

 ③毒素が関与していないので、CLDM併用の有効性がないと思われる

 ④CLDM使用はペニシリンアレルギー患者に

としています。

でも診療科へ思い切った指導が出来ていないため、使用する医師にこっそりと聞いたりしています。使用している医師の意思も尊重していますが、さすがにこの処方例はICTの詰め寄り処ではないでしょうか?

文献的にはCLDMはFusobacteriumの一部に耐性株があるので、β-ラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリンの方が有効であると記載もあるくらいです。エビデンスとのかみ合わせが上手く行けばよいのですが。思い切って介入の方向にいきたいです。

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2008年2月 6日 (水)

インプラント挿入の患者から出た膿瘍

先日、大腿骨頭の置換術で手術した患者が歩行困難ということで来院されました。手術は聞くところ4年前だそうです。関節液を穿刺して提出してきましたが、主治医は『何菌ですか?』といつものように尋ねてきました。どうやら、いつも菌名や結晶成分の有無を迅速に報告している効果が出ているのか、塗抹依存診療科のようです。良いことです。

特に整形外科の領域では、抗菌薬投与する前に、塗抹で起炎菌を絞り抗菌薬の選択をすることが必要になってくると各種ガイドラインにも記載されています。日本のガイドラインにははっきりと書かれていないように思いますが、サンフォードガイドなどの米国のガイドラインにははっきり書かれています。でも、検査技師もそのようなガイドラインに積極的にグラム染色をしましょうと記載があるのは知っていない事項なのでしょうね。

でも、今回は究極です。グラム染色の結果から『ぶどう球菌』ですと言ってみたものの、インプラントが埋め込んでいるので、CNSか黄色ぶどう球菌かどちらなのでしょうか?判別出切れば良いのですが。

いつも見ていると、黄色ぶどう球菌はCNSに比べやや小さい気がしますが、皆さんどうでしょうか?私はいつもそう思って鑑別していますが、結構正解します。でも主治医はその次、つまり『MRSAかな?』と言っていました。さすがに解りませんと思いましたが、地に足付けて考え直しました。

①術後時間が経過していること

②黄色ぶどう球菌は確信できること。

③市中感染が濃厚ですが、創傷などはまったくないこと

などを考えて、MSSAの可能性が高いと感じました。

が・・・、さすがに耐性菌かどうかの判定は難しいと思います。でも黄色ぶどう球菌と判別出来るだけでも進歩している感じがします。スメア掲載します。

少し、私的に判読しますと、新鮮な白血球が多数あり、非常に炎症反応が進んでいる状況と急性発症の可能性が高いと思われます。また、好中球に混じって単球が見えていますが、単球の数が少し多いかな?と思う反面、強拡大からは単球に貪食されたぶどう状の菌が見えます。ぶどう状の菌はくっきりと大小不同があまりなく、しっかりと染色されやや小型であるので、黄色ぶどう球菌を示唆します。今回は、このような判読から、黄色ぶどう球菌の人工関節に発生した関節炎と感じます。

黄色ぶどう球菌です。感じ取って下さい。結局MSSAで、ずばり正解しました。

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2008年2月 5日 (火)

無念100点ならず・・・

いつもあれだけ言っているのに、無念です。今回は菌種まで解っておきながらはっきりと言えなかったんです。くやしいです。

朝仕事をしているといつものように、血液培養陽性のサイン(当院は黄色になります)が鳴り、いつものようにスメアを作りました。で、覗いたらこの像です。

患者は60歳、男性。DMあり。3日前から容態が悪くなり、本日悪化したため緊急入院です。DICも起こし、血圧低下。敗血症性ショック状態です。初期治療にMEPMで開始していましたが、抗菌薬の妥当性について検討した結果、DMもあり、菌がスメア以外にある可能性も示唆されたためCTRX 2g/日/分1に、一応CLDM 1800mg/日/分3加えて再発進です。菌のことがはっきり言えたらCLDMの是非も考えたのですが、empricとしては適当だったのでしょう。

さて、何菌でしょうか?ブログ愛好家であれば100点も可能でしょう。

ちなみに到達レベルは

  30点・・・グラム陽性球菌

  50点・・・連鎖球菌

  80点・・・α?β?腸球菌?肺炎球菌?の鑑別可能

  100点・・・ずばり菌名

個人的な判定値です。気にしないで下さい。

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2008年2月 4日 (月)

繰り返す肺炎

この時期はインフルエンザが流行します。今年はAH1型(ソ連型)が流行しています。本来、流行始めはソ連型、大流行を起こ1-2月はAH3(香港型)が目立ちます。インフルエンザの流行に合わせて起きるのが細菌性肺炎ですが、特に肺炎球菌性肺炎は感冒が前駆症状に多いことがあるとの報告も多いです。最近は劇症型の報告例も増えてきていますが、米国では血清型の12型が劇症化するとの報告もあるようです。肺炎球菌のワクチンも、本邦では接種できるようになりましたが検出頻度の多い23価ワクチンになります。

今回のこの症例はどうでしょう?毎年、この時期になると入院される患者で、2年前に予防目的で肺炎球菌のワクチンも接種していますが、昨年も入院、今年も入院するくらいの肺炎になりました。DMも基礎疾患にあり、感染症のコントロールが少し難しい症例ですが、やはり喀痰塗抹でこのような像です。

少し、気になり調べてみましたが、分離された肺炎球菌の血清型は6A型。肺炎球菌の尿中抗原も陽性です。感染のコントロールは難しいのでしょうか?

やはり、塗抹は急ぐのでしょうか?毎年同じになるのは予測されています。じゃあ、尿中抗原などはもっと急ぐものでしょうか?疑問ばかりです。

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2008年2月 1日 (金)

さて、結論です

今回の症例を少し追って解説していきましたが非常に難しい内容だったと思います。要点は検体の正確な採取とその評価、合併症の判断(鑑別)、起炎菌検出のタイムコースなど、状況によりその診断方法や治療に含め、グラム染色の報告も変わってくる可能性があるということです。実は私たちの検討(n=148)ではAOSCの悪化の要因として、

①クロストリディウムが出ていること

②複数菌感染であること

③血液培養陽性であること

④主に薬剤耐性菌と言われる菌が検出されることです。

今回の架空事例では①②③全て当てはまることです。

血液培養陽性⇒何で陽性なの?胆汁スメアは急ぐの?など色々な報告様式が考えられます。でも、予後不良因子を出来るだけ早く見つけ治療を開始するかで、今後の治療も変わってくるはずです。色々な要因も含め、グラム染色でいろんな角度から感染症を見つめることが出来るのか?が大切だと思います。

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