先日、ICTで相談受けた症例です
14歳女性。1週間前から感冒様症状あり。近医にて抗菌薬(CDTR-PI)処方されるが改善なく、翌日再診したそうです。胸部レントゲンにはキレイといっては悪いですが、陰影像で肺炎のため、当院への入院になりました。市中肺炎疑いにてABPC/SBTと加えてAZMの投与を開始しました。インフルエンザ迅速とマイコプラズマIgM抗体は陰性。肺炎球菌尿中抗原も陰性です。喀痰検査では常在菌のみでしたが、新鮮な好中球の侵潤のような像がある割りには菌が見えない。CDTRの影響もあるかな?と判断できる像です。3日しても改善なく、ICTへ相談があり介入になりました。
そうです、考えられる内容としては『マイコプラズマのマクロライド耐性株』。早速AZM⇒MINOへの変更です。すると、予想した通りに反応ありました。
ただ、どうしても証明したいとの一心です。
①培養⇒時間かかる
②感受性⇒市中病院ではもっと非現実的
などの要素もあり、駆け込み寺のごとく遺伝子検索を依頼しました。
ヒットヒットというか、私の予想は当たりマイコプラズマのマクロライド耐性菌だったようです。文献(AAC, Dec. 2004, p. 4624–4630)にもある市中に蔓延している株だったようです。今や2割の割合で検出され、医学的にも問題になってくる感染症でしょう。 迅速に解る時代になりました。凄い発展です。
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コメント
こんにちは.
我々も同様のケースを数回経験していますが,いずれも最終的にマイコプラズマが分離できませんでした.
先日,イタリアのとある先生にお会いする機会があったので,小児の治療についてお聞きしたら,"Tons of fluoroquinolones are used in children"とこっそり教えてくれました.日本では,割と気にせずminocyclineが使われている印象ですし,様々な副作用が教科書的にはあるはずですが,意外にも使われているようです(使うことを推奨しているわけではないですよ...)
いずれにせよ,小児のマクロライド耐性マイコプラズマは,問題なはずです.
一方で,マイコプラズマはけっして抗菌薬がないと治らないわけではないので,自然に治っていくケースもかなり多いのでしょうが...
駄文でした.久しぶりに何か書きたかったもので...
投稿: IDカンファレンス管理人 | 2007年12月 7日 (金) 04時46分
IDカンファレンス管理人様。
いち小児科医として、マイコプラズマ疑いの症例で、AZM、CAMに反応がない例に対してMINOがよいのだろうな~・・と分かっていても、8才未満だとやはり躊躇してしまいます。
自然経過でなおるのかもしれないし、点滴でのCLDMは効果があるとか、ないとか判然としませんし。
そういった場合、ご家族に同意を得た上で、短期間に限りMINOを使用した例はあります。
ただ、マイコプラズマという病原体そのものが引き起こしている症状なのか、病原体によって過剰反応したサイトカインによる症状なのか・・・・雲をつかむような思いをしながら診療しています。
管理人さまへ
同様の症例を当科でも経験しました。
幸い、MINOを投与するのに躊躇する年齢ではありませんでしたし、投与後は症状も軽快しました。
本文中のマイコプラズマの遺伝子検索の件ですが、どの検査機関に依頼すればよいのでしょうか?
結果判明までの時間やコストはどうなりますか?
分かる範囲でけっこうですので、ご教示ください。
投稿: かけだしICD | 2007年12月 7日 (金) 13時30分
管理人様
「かぜに抗菌薬」のツケがまわってきたのでしょうか・・・
長文失礼しました。
投稿: かけだしICD | 2007年12月 7日 (金) 13時32分
かけだしICDさま
診療は非常に難しいことだと思います。私はICTで助言を主にしている身分なので少しは気が楽だと思いますがハラハラする時も多いです。勿論アウトカムが一番大切なのは理解できています。マクロライド耐性株は今年で2-3例の経験あります。増えてきています。
さてご依頼の件ですが以前のブログに掲載していますので詳細は依頼先とご連絡下さい。大楠先生は非常に好意的な方ですので、気軽にご相談に乗っていただけるかと思います。
http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_13c5.html
結果判明は何もなければその日のうちにご連絡貰えると思います。非常に迅速かつアグレッシブな答えが返ってきますので心構えも大事です。コストは恐らくかからないと思います。
ID CONFERENCE管理人さま
コメントありがとうございます。Tons Quinoloneですか?そうでしょうね。LVFXもそうですが、MFLXや最近出たGRNXなどはTonsになるのでしょうか?でも子供には使えないので、この場合はNLFXになるのでしょうかね?
先生のブログ更新してくださいよ。先日の学会の感想なども含めて。医師と技師の良い付き合い方などは如何でしょうか?
投稿: 師範手前 | 2007年12月 7日 (金) 15時46分
かけだしICDさま,師範手前さま
コメントありがとうございました.ふと思いましたが,テリスロマイシン(ケテック)は小児の適応や,マクロライド耐性マイコプラズマに対する効果はどうなのでしょうか?
ブログ,久しぶりに更新しました.先日の学会についてまず思い出しながら書いてみました.またよろしくお願いします.
投稿: ID conference管理人 | 2007年12月 9日 (日) 22時19分
ID conference管理人さま
コメントありがとうございます & ブログ更新ありがとうございました。
ご質問のMacroride耐性Mycoplasmaの件で、Telithromycinへの影響の件ですが、Antimicrob Agents Chemother. 2005 June; 49(6): 2302–2306. に少し記載ありました。A2063Gというタイプが多いのですが、耐性機序は基本的にはメチラーゼになりますので、ダメなようです。こういった株はLZDもだめなんでしょうね。ご参照を。
投稿: 師範手前 | 2007年12月10日 (月) 21時13分