膿胸からの見える情景
本日は感染管理認定看護師研修過程実習2日目でした。培養の判定と抗酸菌、真菌の供覧実習をしました。細菌検査は初日のグラム染色が脚光を浴びていますが、意外に2日目の過程が大事で、コンタミすると同定・感受性結果は異なるなど、一歩間違えるとあらぬ方向に進んでいきます。その時ばかりは基本が大事と思います。それは感染症の診断とて同じことが言えるのでしょうか?
さて、本日は膿胸の患者です。慢性呼吸器不全があり誤嚥も酷かったんですが、本日胸水も溜まり、ドレーン留置になりました。それほど臭みのない検体ですがドレーンで内容物を採取しまし、グラム染色を見ました。するとこんな像が見えました。そうです、皆さんお分かりでしょうか?慣れている方は『ほうほうほう・・・』と思うでしょう。また、背景は非常に炎症が強く、また一部壊死した部分も見えます。像は膿胸!!と語りかけてくれます。
Fusobacteriumの塗抹所見です。ここまでキレイに見えるのは少なく、せっかくなので掲載しました。究極の方は菌名まで判ってしまうようです。勿論私は菌名をズバリ!!当てました。師範の手前に辿り着いただけあります。答えはFusobacterium nucleatumになります。『何で解るの?』と言われる方も多いでしょうが、このように細長い紡錘状で、先が細く尖っているもの、近隣にF. necroformって菌がありますがもう少し太いでしょうか。
次の日培養で見えた菌も掲載しておきますが、たまに形状といして中心部が膨らんだ形状で観察されることがあります。他ににβラクタム薬に作用した(PBP3)腸内細菌も似た様な像を示すこともありますのでご注意を。
Direct Smear Atlasには『Central swelling charactristics』と記載されています。③の像はまさにこの表現が当てはまっています。どうぞ、供覧あれ・・・。
話変わりますが、月9の『ガリレオ』面白いですね。グラム染色で『ガリレオ』できませんかね?
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コメント
師範手前さま
Fusobacterium nucleatum、教科書的できれいに貪食されて見えていますね。
師範手前様言われるように、Fusobacterium nucleatumや
Capnocytophaga ochraceraの形体は細長く先端がとがって見えるのが特徴的ですが、同じ Fusobacteriumの中でも necrophorumやmortiferumあたりになると非常に多形成にみえますね。
また、Fusobacterium nucleatumは気道からの検出頻度が、他のFusobacteriumより多い菌と思います。
>たまに形状といして中心部が膨らんだ形状で観察されることがあります・・・
βラクタム薬系抗菌薬が腸内細菌に作用してPBP2・3阻害により中心部が膨らんだ形状(バルジ状)なども見られますね。よく見ることが多いのはやはり、同じくβラクタム薬系抗菌薬のPBP3阻害による伸長化(フィラメント化)や、キノロン系抗菌薬によるフィラメント化も有名ですね。
抗菌薬による形体変化など、理解しておくことも大変必要と思います。抗菌薬投与有無も分かりますしね。
投稿: 倉敷太郎 | 2007年11月 8日 (木) 15時38分