polymicrobial pattern
本日も相談受けた症例です。
喀痰所見に見る『polymicrobial pattern』です。横文字が弱い人にも解釈できるように訳しますが、ようは『色々な菌が見える』と解釈できます。
消化管穿孔など常在菌が多数に混合感染している場合は勿論確認できますが、呼吸材料(特に喀痰)で見えた場合のことです。
良く見えるのは口腔内の常在菌と思われる菌が多数確認されるケースでしょう。喀痰で見えた場合は『誤嚥』を示唆するもので、特に貪食があれば確実なことが言えます。発生リスクには嚥下障害や歯科の不衛生などありますが、塗抹は殆どの症例で同じようなものが見えることが特徴です。誤嚥だけならまだしも、肺化膿症まで発展している場合もありますので見えれば塗抹検査報告書に『誤嚥の像が見えます』、『誤嚥?』など添付してあげれば良いでしょう。臨床も『そうかな~?』って思っている場合も結構ありますので手助けしたいものです。
解説また2つほど掲載しておきますね。
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コメント
師範手前さま、おつかれさまです。
先日来からのスメアのスライド、非常に分かりやすくまとまっていて、気持ちいいほどです。
日常私も、よく目にする像です。これほどまとまって比較ができて
いれば、みなさんも今度目にするとき、非常に鑑別しやすいと思います。このようなもう一歩踏み込んで解説されているものに、中々、お目にかかることは少ないと思います。
みなさんもお気づきになられているでしょう、菌体やその周囲の微妙なタッチ、あるいは染色性、背景の色調など、とても自然で
きれいに撮れていますが、差し支えなければ、どのような方法で
撮影されているのか、教えていただけないでしょうか。
私はデジカメで写真を撮っていますが、とてもこのような微妙なところの画像表現は無理です。
投稿: 倉敷太郎 | 2007年10月29日 (月) 17時41分
倉敷太郎さま
解説ですが、少し画像が小さくてすいません。
質問受けた方にも即時対応でPPTにして返却しました。予想以上に解説が凄く腰が抜けたらしいです。見ていると色々感じますので出来るだけ詳細に解説して目標を立ててあげるのも必要と思い、スライドがしゃべっている内容について代弁したまでです。
デジカメも撮影の場合にはメーカーによっては良く写らないこともあります。うちは裕福な施設ではないので、血液像を見る顕微鏡で間借りしています。きっとCCDカメラなのでキレイなのでしょう。血液さんはいつもマルクの標本を作っていますよ。
投稿: 師範手前 | 2007年10月30日 (火) 14時29分
プロ的解説の後で稚拙な質問を飛ばして申し訳ないのですが、ご指導願えますか?polymicrobial patternにはいつも悩んでいます。Gecklerの分類で1~3群のような検体でも雑菌が貪食されているように見えるスライドがあります。誤嚥であれば4群になる事が多いですよね?当院では喀痰が10~20検体ほど出ますが、毎日のように誤嚥かな?と悩むスライドがあります。実際かなり疑って主治医に確認しても「誤嚥をしているような可能性はありません」と言われる事が多いです。喀痰を検査室に提出するまでに時間がかかると、検体中の白血球が貪食を続ける・・と聞いた事があるので「誤嚥」の判断は慎重にしています。誤嚥を見るときの注意点として上皮細胞の集合、胃液などの酸性物質・・などを書かれていましたが、他に貪食像が全体の何割ぐらい見られたら・・とかありますか?数個の貪食像では誤嚥とは判断しませんよね?
投稿: ドラ | 2007年11月 7日 (水) 23時43分
ドラさま、初めまして。ドラといえばドラえもんです。私は個人的に昔からドラえもんストラップの収集をしています。最初は全国的に20種類くらいしかなかったのですが、今や多すぎて携帯電話のストラップを変える時間が無いくらいになってしまいました。1年くらい前に数えたかとは思いますが100種類を超えていました。廃盤品もあるようでそれは価値が出るようです。
話は大きく反れましたが、『Gecklerの分類で1~3群のような検体でも雑菌が貪食されているように見えるスライドがあります。』
の件ですが、失礼ですが本当に貪食でしょうか?白血球の上に乗っている、または付着しているだけじゃないでしょうか?コントラストを変えて少し観察しているのでしょうか?良くある過ちに(当院でもそうですが)そういった確認をしっかりとできていない状況が確認できます。
上記の事項がクリアできたとしてお話しますが、誤嚥は唾液誤嚥と胃液誤嚥の2つがあろうかと思います。後者は嘔吐物などの誤飲によって起こるもので化学的な損傷を伴うものになります。胃液に菌が多量に居るような状況ではあるのですが、題目のようにpokymicrobial patternに関しては唾液誤嚥の方が多いと思われますが如何でしょうか?さて、何割に貪食が確認されるかどうかの記載文献に関しては存じ上げていませんので探してみます。
ただ、唾液誤嚥つまり、リスクがある方でなく健常者でもmicro aspirationが起こっているので貪食像は偶然に発見できても良いと思われます。しかし、誤嚥像ありなどのコメントを添えるだけで本当に治療方針が変わる場合もありますので、記載することは必要かと思います。必要ないと思われても100人が100人とも不要と思われないので、可能性のあることは記載することが検査つまり付加価値の臨床的意義が高まると思います。めげずに頑張って下さい。
ただ、何故誤嚥により貪食像が見えるのでしょうか?
私は下記のプロセスを考えています。
唾液誤嚥⇒誤嚥物の貯留⇒化学的損傷⇒基底膜の露出⇒常在菌と基底膜の接触⇒白血球の浸潤・貪食⇒誤嚥像
と考えていますので、貪食像ありはmicroaspirationがどこか起こっているのかもしれませんが。
投稿: 師範手前 | 2007年11月 8日 (木) 20時51分
ドラさまはじめまして
>Gecklerの分類で1~3群のような検体でも雑菌が貪食されているように見えるスライドがあります。
Gecklerの変法は普通、未洗浄の喀痰で評価されるわけですが。私のところでは痰の品質が悪くなければ(どろどろで洗浄すると溶けてしまう)、できるだけ洗浄を行って評価しています。洗浄後の品質評価の方が現実的で合理的だと思われませんか。
洗浄後はグレード2・3群は4群へ、4群は5群となることが多く、唾液由来コンタミによるトマツの見苦しさも少なくなり、貪職像も洗浄前に比べ明瞭化が期待できると思います。
今回の誤嚥(中枢神経障害者に好発する誤嚥、胃内容の逆流による誤嚥、気道処置<感冒や挿管>それぞれの成因がありますが)、師範手前さま言われているようにpolymicrobial patternに関しては唾液誤嚥の方が多いと私も思います。
先日、トマツでpolymicrobial patternが見え、主治医に誤嚥の可能性をお聞きしたところ、予想通り、否定されました。
次の日培養で、S.Intermedius (milleriグループ)とSphingomonas paucimobilisそれぞれ2+発育してきました。
慢性呼吸不全で治療されていた患者さんで、近々退院予定でしたが、CRPが2~3㎎/dlの水準から下がらない、微熱もあり、micro aspirationによる誤嚥の可能性が考えられ、経口抗菌薬をおすすめしました。
その後、CRPが長期間2~3㎎/dlの水準にあったものも陰性化し、微熱も出なくなったようですよ。
私としては、手間はかかりますが、できるだけ喀痰の洗浄を行い、少しでも自信を持って見て行くしかないと思います、いかがなものでしょう。
>話変わりますが、月9の『ガリレオ』面白いですね。グラム染色で『ガリレオ』できませんかね?
『ガリレオ』爽快的でおもしろいですね、裏の裏までグラム染色で見て行けたらと思うと、臨床のことも色々勉強しなければならないですね。
投稿: 倉敷太郎 | 2007年11月13日 (火) 17時06分
今ごろコメントしても見て頂けるのでしょうか・・。実はこのブログでご指導頂いて、「いろいろ挑戦してみます」とお返事したつもりが無くなっていました。送信し忘れていたようです・・すみません。そして、あれから数ヶ月、誤嚥像を疑っては臨床と一致するのか確認してきたところ、自分の中ではこのような状態ではないか・・と見えてきた気がします。ただ純粋な「高齢者の誤嚥」は少なく、慢性呼吸器疾患を抱えステロイド服用歴が長い人にこのような像が多くみられました。これからも修行を続けます。今日は一言お礼が言いたくて・・。このブログのお陰で色々勉強になります。ありがとうございました。
投稿: かなぶん | 2008年6月 5日 (木) 00時05分
かなぶんさま
>今日は一言お礼が言いたくて・・。このブログのお陰で色々勉強になります。ありがとうございました。
勉強になるのは何よりです。でも、『ただ純粋な「高齢者の誤嚥」は少なく、慢性呼吸器疾患を抱えステロイド服用歴が長い人にこのような像が多くみられました。』こういうことは臨床じゃないと判らないことでしょうし。
高齢であれば、殆ど誤嚥?と思われる像が見えます。歯科口腔衛生状態が悪い、嚥下障害が多いなどです。マイクロアスピレーションは常に起こります。私は良くムセが起こります。なので、終末期は誤嚥との戦いと思い、タバコはしませんし、アルコールも控えています。肺炎のリスクを少しでも下げるようにしていますが。どうなるんでしょう。メタボ?そんな響きも大事ですね。
投稿: 師範手前 | 2008年6月 5日 (木) 19時30分