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2007年8月 8日 (水)

本日は非常にレアな症例をお見せしたいと思います

症例:78歳女性。HCCが基礎にあり、2年前に結核。昨年にHCCの肺転移を認めフォロー中でした。乾性咳嗽が日頃からありましたが、今回は下痢と湿性咳嗽が酷く、肺に結節像を認め呼吸困難を来たし来院。主治医から結核の再燃か早く見てほしいと依頼。喀痰はM&Jの分類にてP3で良い痰でした。結局抗酸菌の塗抹は集菌法で陰性。一応、一般細菌も見てみようと思いこっそりしてみました。(結局細菌の依頼もありましたが・・・)。それがこのスメアです。

スメアは判りにくいですが、白血球は少なく、円柱上皮の剥離が酷く、またN/C比が大きく、核が偏在しないものも。HCCの肺転移したものかな?末梢血の白血球数は2000/μlまで低下しているので、喀痰に見れないかな?とも思いました。次いで菌を見ることにしました。グラム陰性の桿菌が多く見えると思います。大腸菌かな?とも採れるスメアですが菌体が少し濃い(しっかり染まり)ので緑膿菌やインフルエンザ菌では無いようです。まあ培養結果待ちです。

次の日に出てきたのはなんと!!

次の写真のような集落が・・・。そうです、サルモネラ菌です。(DHL培地というグラム陰性桿菌用の選択培地で硫化水素産生するサルモネラは黒くなります。)

随分前になりますが近隣の施設でサルモネラの肺膿瘍があったことが頭によぎりました。全身感染症なので当たり前なのかな?と思い、主治医に連絡しましたが『そんなことあるんですか!?』と想定外の驚きのようでした。一応文献渡し(HCCがハイリスクになって肺炎になる症例のもの)てCTRXを開始(十二指腸の閉塞もあったので)しました。患者は特に変わった飲食歴は無かったのでキャリアだったのかもしれません。

こんなこともあるんだな?と経過見ています。

このスメアでは何とも何とも・・・。培地と掲載しておきますね。

400×400

Photo 喀痰から分離された菌

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グラム陰性菌」カテゴリの記事

コメント

師範手前さま
興味深い症例ありがとうございます。自分はサルモネラによる肺炎や肺膿瘍の経験がありません(きちんと診断できていないだけ・・?)AIDS患者では非チフス性サルモネラによる菌血症・続発する肺病変の頻度が高いようですが
http://www.chestjournal.org/cgi/content/abstract/112/5/1197 など
一般的に肺炎・肺膿瘍の原因菌としては想定のかなりかなり下位にくると思います。肝硬変も細胞性免疫不全の要素があり、また腸管から侵入した菌が門脈血流から網内系をスルーして全身菌血症を来たすことがよく経験されます。このケースでも腸管から侵入して肺へ血行性に播種されたのでしょうか。下痢便や血液培養からもサルモネラが検出されたのでしょうか?ご教示いただければ幸いです。

投稿: 総合内科医志望 | 2007年8月11日 (土) 11時50分

総合内科医志望さま
コメントありがとうございます。チフス菌、パラチフス菌にしても非チフス性サルモネラ菌にしても肺からサルモネラを検出したのは私としても初めての経験です。

今回のケースとしてはHCCのターミナルのため免疫不全が大きな要素だったように感じます。今文献的にも問題になっているケースはHIV感染症のように思います。
追加の診断検査としてのコメントで良い質問して頂きました。糞便検査(下痢の症状などないか?)と血液培養(発熱に対するもの、特に侵入性の菌なので)についてです。
主治医にしっかりと確認して、追加の菌検索に対する対応をさせていただいています。血液培養については陰性でした。便培養ですが案の定サルモネラが出てきました。入院時には嘔吐もあったそうです。ひとつ問題が出てきて①嘔吐の誤嚥によるサルモネラの検出②本当に肺炎の鑑別が必要になってきました。肺炎は入院時から悪化していることもあり、HCCメタがそうさせてるとの主治医の見解でした。ただ、一様にはそうは言えないところもあり、抗菌薬の投与していない状況も利用して再度喀痰検査しましたがやはり陽性。CTRX開始としました。下痢便もあったので患者の状態悪化により胆管から肺炎になっただろうと推測しています。JCM2003.5820-5822にも似たような報告がありました。非チフス性サルモネラ肺炎は珍しいこと、特にO9群(今回はO9群でした)はもっと珍しいようです。60歳以上と悪性腫瘍の患者はハイリスクで、死亡率は68%だそうです。見つかるのが早いと良いのですが、このときばかりはグラム染色の無力さがわかります。

投稿: 師範手前 | 2007年8月13日 (月) 16時37分

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