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2007年8月13日 (月)

プロカルシトニンの簡易キット

重症感染症の炎症マーカーとして最近『プロカルシトニン』についてのセミナーなど聞かれるようになってきました。さて、プロカルシトニンって何?と思われる方もいらっしゃると思いますので少し解説を。

①起炎微生物の診断に

 『プロカルシトニン』は甲状腺のC細胞で分泌されるペプチドでカルシトニンの前駆体になります。それが、細菌や真菌の感染で産生されたTNF-αなどの炎症性サイトカインの刺激を受け、肺、肝臓や筋肉などの臓器で血中プロカルシトニンが増加します。一方、ウイルス感染ではインターフェロンγがプロカルシトニンの産生を抑制するために増加しないことが知られ、ウイルス感染か細菌感染かの鑑別にも有用であるとの報告もあります。

②敗血症の診断に

次に細菌感染の場合は肺炎などの局所感染の場合にはプロカルシトニンの産生量は少ないが、敗血症などの全身性の重症感染症が引き起こされるとプロカルシトニンの濃度が高くなります。なのでプロカルシトニンの濃度により細菌感染の状況を把握することが可能になります。

③炎症性マーカーとしての有用性

プロカルシトニンは感染症の早期から血中濃度の増加が始まり12時間ピークになる。また半減期も長い(22時間)ので長時間血中濃度た高い状態を保てる。CRPのピークは24時間になるので、CRPよりも早期に炎症反応の把握に用いることが出来る。また、ステロイドや白血球、抗がん剤の影響も受けないので有用性が高い検査と言えるようです。

先日PCT-Qという簡易キットが日本でも発売されました(http://www.wako-chem.co.jp/rinyaku/products/pct/pct-q.htm)がテストラインの色調によりプロカルシトニンの濃度が判定量可能だそうです。血清600μl滴下(同封のスポイドで3滴)するだけです。重症の敗血症では10ng/ml以上となるケースも多く、局所感染、オカルトの菌血症であれば<2ng/ml以下、菌血症の場合は>2ng/ml、<10ng/mlになる場合が多いそうです。色調は同封の色見本で見比べるようです「PCT-Q.pdf」をダウンロード 

先日当院でも少ししました。一過性の肺炎球菌菌血症例と肺炎桿菌の肝膿瘍例(血液培養陽性)です。肝膿瘍例では少し陽性ラインが検出されていますが、濃度が濃くないのですが陽性なのでこの場合は菌血症になろうかと思います。血液培養の結果が今判明しなくても直ぐにわかります。

本当に有用性が高いか検証していかないといけませんね。でもこの値に捉われると感染症の診断に返って混乱を招く恐れもあるので、必要な時に使って見ると良いでしょう。

Pct プロカルシトニンの測定(PCT-Q)

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コメント

教えていただきたいのですが、プロカルシトニンを腫瘍熱と感染症の区別に使えるのでしょうか?もしご存知であれば文献なども教えて下さい。

投稿: あかざわ | 2009年10月 9日 (金) 08時17分

あかざわ様

この文献はご覧になられましたでしょうか?
Clinical Infectious Diseases 2004; 39:206・17
メタアナライシスで記載されているので何か参考になるかと思いますが、腫瘍性病変であれば当然PCTの産生能が落ちる可能性もあるので偽陰性はあるようですよ。

投稿: 師範手前 | 2009年10月10日 (土) 01時35分

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