« 新人研修会お疲れ様でした・・・ | トップページ | 抗酸菌の塗抹標本 »

2007年6月12日 (火)

膿瘍の炎症細胞

今日は症例ではありません。レクチャー(うんちく?)です。

検査をしていると肺膿瘍、肝膿瘍など膿瘍というものが良く来ます。ただ、検体が提出されるタイミングが気になります。抗菌薬が投与されているケースが問題で、特にキノロンを悪く言うつもりはありませんが、菌が全く見えない状態があります。

初期診断で膿瘍形成してプンクした状態で医師から『今、膿瘍プンクしたけど何か居る?』と聞かれても『何も見えません』としか答えようがないですね。こちらも残念ですが、医師も残念に違いないです。そういった場合に問題なのは標的の細菌が掴めないままキノロンの注射やカルバペネムの投与になってしまうのでしょう。消えているのは”前投与の抗菌薬に効果がある”とメッセージを残しています。

付け加えて炎症の状態を伝えると『この膿瘍は今どんな状態で形成されている』が伝えれるはずです。膿瘍が進行しているのか、治りかけか、終焉なのか。それによっては治療方針が異なると思いますがどうでしょうか?

①極めてアクティブな炎症所見

Photo_48

好中球の核が非常にキレイに見えるものが多数(ほぼ全部)確認できますし、一部単球も確認できます。核は分節から桿状に見えますがさほど左方移動はしていないことが多いです。核がキレイで分節が多いのはまさに炎症の現在進行形です。

②やや落ち着いた炎症所見

Photo_49

①に類似した核がキレイな好中球と核や細胞質が不鮮明な白血球が入り混じっています。長期に放置されていた膿瘍(肝膿瘍などサイレンスのもの)に多く見られます。ただ、核がキレイなのは今も炎症がアクティブなことを示していると推測されます。

③炎症の終焉?

Photo_50

①→②→③と進行している過程と思われ、核がキレイな白血球は殆ど見られない状態です。背景には浸出液もそうですが核や細胞質が非常に不鮮明な白血球が多く炎症が終焉に向け進んでいっていることが推測されます。この状態であれば排膿(洗浄も?)してしまえば、患者の状態ありきですが抗菌薬が不用な場合もあろうかと思います。

グラム染色はエオジン染色が後染色になるので或る程度理解可能と思われます。まず菌を見つけることは最低条件ですが、背景も読めるようになれば面白いですね。

どう思われます?コメント下さい。

|

« 新人研修会お疲れ様でした・・・ | トップページ | 抗酸菌の塗抹標本 »

背景など病態把握」カテゴリの記事

コメント

いやまったくそのとおりだと思います。背景が非常に重要と考えます。炎症があるかないか、細菌性が疑われる炎症なのか、ウイルス性?アレルギー性?が疑われるのか、炎症の程度は急性なのか、慢性なのか、その中間なのか、慢性期の再燃なのか・・など、背景はとても重要なので、まずこれを先に考えます。薬が使われているのかも重要です。で、肉眼的にMなのかPなのかゲックラーの分類で炎症細胞と上皮細胞の比率はどうなのか、全て重要情報です。ずっと前のいい加減なグラム染色標本観察時代が悔やまれます・・

投稿: rabitto | 2007年6月16日 (土) 07時36分

rabittoさま
コメントありがとうございます。
まさにそうですね。炎症の度合いなど判れば今患者さんがどういう状態なのか、これからどういう状態になっていくのか想像できます。菌が不明でもどれくらい寄与できるか考えることが必要と思っています。でも先日ある医師に『別に望んでいる情報は菌のみで、必要ないよ~』と言われました。『確かにそうですが、原因菌を想定する上で背景観察は必要と思いそういった事を頭で描きながらグラム染色を観察するのは必要です。検査技師はこれからそういった目を養って行く必要があると思います』と返答しました。でも『そういうのは病理に出すから必要ないよ』と言い返されました。
確かに理にかなっていますが、夜間に病理は出来ないし、依頼しても時間がかかるしグラム染色より迅速性には劣る場合も多いと思います。なのでグラム染色で或る程度把握できるのは医療の面から言ってもメリットのあるものと思っています。
どうでしょうか?ん~、少し間違っているかもしれませんか?意固地に反論してしまいました。職人気質なのでしょうか?

投稿: 師範手前 | 2007年6月16日 (土) 10時41分

師範手前様に同意です.
炎症所見をみるのに喀痰を病理に出すことはありません.時間もかかりますし,ましてやお金もかかります.
グラム染色では菌のみならず,隠れている様々な情報を統合的に判断し,それこそ「職人的な」所見を返してもらえると素晴らしいと思います.
グラム染色はその場で起きている「真実」を反映している唯一のものだと思います.
これからも頑張って下さい.

投稿: ID Conference管理人 | 2007年6月16日 (土) 23時20分

ID Conference管理人さま。ご無沙汰しています。コメントありがとうございます。勇気が出ます。特に『グラム染色はその場で起きている「真実」を反映している唯一のものだと思います。』は感動しました。大曲先生のブログで一時期『グラム染色はスナップショット』という記載がありました。まさにその通りと心を打たれたものです。スナップショットを連続して撮ることがグラム染色の真実のように思えてきましたが、前向きすぎるのでしょうか?言わばこのブログは写真(真実)の掲載が多いことから、グラム染色のフライデーみたいなものでしょうか(笑)?宜しくお願いします。

投稿: 師範手前 | 2007年6月18日 (月) 18時39分

先日ある医師に『別に望んでいる情報は菌のみで、必要ないよ~』と言われました。

の続きでコメントもらいました。

小規模の病院・医院でグラム染色を自主的に行い診療補助に充てている施設では、病理医すら居ない状況であるようです。そういう施設の場合はグラム染色のみで病状把握が可能であれば非常に有効な結果になるかと思います。全てが整っている施設では確かに病理検査も可能かと思いますが、確かに小規模の病院ではこのグラム染色道場の考えが良い方向性を生み出しているのだと実感しました。これからも頑張っていこうと思いますので応援宜しくお願いします。

投稿: 師範手前 | 2007年6月19日 (火) 15時04分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 新人研修会お疲れ様でした・・・ | トップページ | 抗酸菌の塗抹標本 »