2022年4月 8日 (金)

グラム染色を使った感染症カンファレンス

新年度になりました。4月から異動に伴い新しい部門や部署に配属となった方々も多いと思います。

そのため、”グラム染色”という素晴らしい微生物検査に新たに関わることとなった方々も多いのではないでしょうか。

良質な医療を提供する上で、抗菌薬適正使用というものがあります。これは、感染症を正しく診断し、それに応じた適切な抗菌薬をできるだけ狭域スペクトルで行うことが重要視されます。広域抗菌薬は投与していて安心感はありますが、長期使用に伴い耐性菌発生リスクを高めることが知られています。耐性菌といってもMRSAのような毎日見かけるものから、メタロβ-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌のような、普段から遭遇しないため認知度の低いものまで沢山あります。AMRリファレンスセンターのHPに分かりやすく掲載していますので一度ご覧ください。
https://amr.ncgm.go.jp/medics/2-1-3.html

さて、抗菌薬の選択は原因微生物の種類により使い分けを行うことも重要です。原因微生物の検索には抗原検査と抗体検査、最近では新型コロナウイルス感染症で広く認知された遺伝子検査などがあります。抗原検査の中には、簡易抗原検査(A群溶連菌や、肺炎球菌尿中抗原、インフルエンザ迅速検査など)と塗抹・培養検査があります。簡易抗原検査は簡便なところがメリットですが、標的となった微生物しか検出できないデメリットも存在します。培養検査はmultiplexですが結果が出るのが数日かかり今知りたい情報が直ぐに得られないというもどかしさがあります。培養検査には、ほぼ必ずと言って良いほど塗抹検査が施行されています。塗抹検査の代表的な項目に前述した”グラム染色”があります。

グラム染色のメリットは、材料採取したその場で培養で検出されるであろう微生物が推定できます。それも菌種レベルで細かく確認ができることもあります。例えば尿でグラム陰性桿菌が確認された場合は太めであれば大腸菌をはじめとした腸内細菌、細めであれば緑膿菌をはじめとしたブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌と予想ができます。分離頻度から言うと、腸内細菌では大腸菌やKlebsiellaが大多数を占めるので、太めの陰性桿菌が見えると、それを標的とした治療が開始されます。ESBLなどの耐性菌も分離されますが、自分が働いている職場や職場の周囲によりその分離頻度が異なるので自施設の感受性率をアンチバイオグラムから確認して、抗菌薬の選択に役立てます。ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌の場合では、ほとんどが緑膿菌になるので、マイナーな菌種まで幅広く覚える必要は直ぐにはないので、緑膿菌の感受性率を押さえておく必要があります。

3_20220407235901 グラム陰性桿菌で幅が広く、両先端は細くなっていないため腸内細菌を疑う。

Photo_20220407235801グラム陰性桿菌で幅が狭く、両先端が細くなっているため緑膿菌を疑う。

菌が確認できれば、それに応じた微生物に最適な抗菌薬を投与することで抗菌薬の適切な処方ができますが、もし鑑別診断で感染症が下位の鑑別に挙がっている状況で、グラム染色をして微生物が見えない場合は感染症が否定される可能性も示唆されるため、抗菌薬投与を一時見合わせることもできます。まったく何も見えない場合であれば、多くの人が納得するでしょうが、微生物が見えていた場合は「どうして、その菌を治療しないのか?」と感じる人もいるでしょう。自分1人で解釈が困難な場合は、普段からグラム染色を見慣れている人や感染症に造詣が深い医師や医療従事者、微生物検査技師に話を伺うことも1つの手です。当院の感染制御部では、グラム染色をもとに抗菌薬適正使用している部署とともにカンファレンスを開催しています。初期抗菌薬はこれで良かったのか、材料は適切に採取され解釈も正しいものであるのか、培養結果との整合性と今後の治療方針の確認など個別化された感染症治療の適性化がそこに凝縮されています。

例えば、こういう架空の症例があります。

症例;80代の女性

主訴;呼吸困難

既往歴;大腸癌(3年前に手術歴あり、他院フォロー中)、認知症。

現病歴・入院時現症;2〜3日前から痰が絡んでいた。本日、朝ご飯を食べてから呼吸苦を自覚し、そのまま寝ていたが苦しくなり家族が救急車を読んで搬送された。BT 37.0℃、RR 35,BP 146/96,PR 110,SpO2=85%。胸部X線では肺炎と思われる浸潤影は認めないが、気道には茶色の気道分泌物(喀痰?)を認めた。肺炎の評価を行うため、原因微生物の確認も含めてグラム染色で確認することとなった。

弱拡大(100倍):喀痰は多核白血球が多数あり、扁平上皮が少数。喀痰として唾液混入の可能性は低く材料評価は良いものと判断。誤嚥性肺炎の可能性も低いものと判断。

20220208-144055 X 100

強拡大(1,000倍):GPCが少数あり、形態はcluster形成でOozing signもあるためStaphylococcus aureusを推定。yeast like fungiは仮性菌糸もありCandida albicansを推定。

20220208-133006 X1,000

20220208-144700 X1,000

現病歴や上記の所見より、

喀痰は見られるが、少量であること。S. aureusとCandidaは経気道的な肺炎を起こしにくく、胸部陰影からも敗血症性塞栓を思わせる画像所見もないことから、確認された微生物は原因微生物として該当しないことと判断した。その後に撮影した造影CTでも、両側下肺野に誤嚥性肺炎と思われるわずかな浸潤影もあったが、肺炎としての抗菌薬投与は見合わせることとなった。

これは、ほんの1例です。

定期的にこのような、グラム染色所見をもとにカンファレンスを開催して情報共有と目合わせを行うことは抗菌薬適正使用に有意義な活動ですので、どこの病院でも開催されると良いですね。

 

 

| | コメント (0)

2022年2月26日 (土)

福岡県臨床検査技師会 微生物部門研修会

先日、山口県臨床検査技師会でお話しをする機会を頂きました。

聴講された皆様、お世話して頂いた方々には厚く御礼を申し上げます。

さて、来週3月5日はお隣の福岡県臨床検査技師会でお話しする機会を頂きました。

資料は下記よりダウンロードが可能なように調整をしました。

現在、資料の作成が遅れまして申し訳ありません。

資料は3月3日の下記よりダウンロード可能です。

参加登録された方は、主催者から送付した書類に書いてあるパスワードを入力してダウンロードを開始してください(17MB)。

当日の資料ダウンロードサイト:https://xfs.jp/mUaxDK

Qr20220303182521342

当日のポスター:https://xfs.jp/83AUx4

| | コメント (0)

2022年2月14日 (月)

山口県臨床検査技師会 臨床微生物部門研修会

2月20日は山口県臨床検査技師会でグラム染色のお話しをさせて頂く機会を頂きました。

研修会に先立って、資料をダウンロードできるようにしました。

諸事情により全てをお見せすることはできませんが、当日は資料片手に講義を聞いて頂ければ幸いです。

資料にはパスワードロックが掛かっていますので、申し込み先から送られてくるパスワードを入れて開封してください。

 

本番用資料(30MB):https://xfs.jp/bhXIQ1


おまけ資料(アトラス)(800KB):https://xfs.jp/Tv6ZEX




また、大変申し訳ありませんが、今回申し込みされていない方はダウンロードをご遠慮ください。

また、資料は個人用として、転載や横流しなどはしないでください。

研修会の内容は、後日ダイジェストとして記事にしたいと思います。

| | コメント (0)

2022年2月10日 (木)

2月は山口県、3月は福岡県で講演があります

新しい職場に来て、少し時間に余裕ができてきたので、毎日グラム染色のことをする時間が少しできました。

さて、コロナ禍で研究会や研修会が全てweb配信で行われる機会が増えました。私もたまに講演依頼がありますが、webが中心になっています。

なかなか、webだと聴衆の反応が分かりにくいし、質問がさらにしにくくなったかと思いますが、顔を隠してでも良いので日頃の疑問をぶつけてみましょう。

2月20日は山口県臨床検査技師会:適切な微生物検査の実践 (グラム染色道場入門) 

http://www.yamaringi.jp/pg772035.html

3月5日は福岡県臨床検査技師会:グラム染色カーニバル

https://fukuokaamt.or.jp/wp-content/uploads/2022/02/20220305carnival.pdf

よろしくお願いします。

先日こんな質問を頂きました、「実習指導中の学生さんからH. influenzaeは色が少し薄く染まると聞きました。本当ですか。」

A:以前から、Haemophilus属は腸内細菌に比べて色が少し薄いピンク色に見えることが多いので、色が薄いと説明しています。赤本にはそういう表現は記載していませんが、Clinical Microbiology Procedure Handbook(CMPH)では、淡い色に確認されることがあると記載があります。比較できそうな写真がありますので、送信させて頂きますのでご確認ください。

染色手技にもよりますが、やはり腸内細菌より薄いピンクに見えます。

こういう感覚でグラム染色を見ていくと面白いですね。

Photo_20220210230501

| | コメント (0)

2022年2月 9日 (水)

真菌は何色に染まるのか

真菌のグラム染色について質問を頂きました。

真菌は細胞壁が分厚いので、グラム陽性に染まるものが多いですが、それは酵母様真菌だけで、糸状菌は赤く染まるものを多く見かけます。

なぜ、同じ真菌なのにこのような違いがでてくるのでしょうか。

グラム陽性菌になるのですが、細菌のグラム陽性菌とは細胞壁の構造が異なります。そもそも、細菌は原核生物で、真菌は真核生物なので染まり方も異なるはずです。

真菌のグラム染色だけを集めた参考書がありますが、そこにはこう書かれています。同じ真菌でも、酵母様真菌と糸状菌では染色性が違うのが良くわかる説明です。

・酵母用真菌は細胞壁にクリスタル紫が浸透しやすく、脱色を受けにくいためグラム陽性は強固に染まる。つまり濃紺色。

・糸状菌は細胞壁にクリスタル紫の浸透が悪く、容易に脱色作用を受けて、後染色のサフラニン(フクシンでも良い)で染まる。つまり赤色。

そのため、グラム陽性に染まる細菌に比べて酵母様真菌より濃く染まっていることが確認できます。

酵母様真菌でも、Cryptococcusは莢膜形成があるので、菌周囲は赤くなり、菌は少し青く見えます。また、Exophialaのような黒色真菌はメラニン色素の影響もあり、黒く見えます。

微妙な染色性の違いですが、この繊細さは菌種の鍵となるので、1つ1つ丁寧に観ていくと良いと思います。

1_20220209225401

2_20220209225401

3_20220209225401

 

| | コメント (0)

«酸素耐性細菌