2019年5月 3日 (金)

グラム染色で病気の原因を探る

連休中ですが皆様いかがお過ごしですか?

 
連休なので、普段以上に感染症例を多く診ている施設も多いと思います。また、微生物検査が直ぐにできない状況も多くあると思います。
 
こういう時は普段より救急診療の中でグラム染色をしている施設が強いですね。グラム染色では細菌の種類を鑑別することができます。そもそも細菌感染症かどうかの判断にも使えます。
 
これはHans Gramが1884年に報告した論文の中にも記載されており、100年以上経過しても目的は一緒です。
 
ただし、彼は論文の中で「今後、様々な研究者によって改良されていくことを望む。」と書いています。染色方法は100年以上で改良されてきましたが、所見の確認についてはあまり大きな進歩はありません。
 
しかし、グラム染色では細菌の情報以外にも、その状態になる原因や病態を示唆する情報が沢山見えることがあります。
写真は誤嚥性肺炎を示唆する所見です。胸部Xp所見では右下肺に浸潤影があります。患者は神経疾患によるADL低下を認める90代の男性で在宅で奥様による食事摂取を行なっています。数年前に胃の全摘をしております。2日前より食欲が無くなり、昨日から37℃の発熱を認めるようになってきました。膿尿は認めず自己導尿で排尿を繰り返しています。
喀痰を生理食塩水で洗浄し、その後スメアを作成してみました。
Photo_82グラム陽性球菌が少数確認されます。多核白血球はちらほら。
3_1 中にはこんな大きな細胞も見えますが、人由来の細胞ではなさそうです。
4 黄褐色の結晶のようなものが見えます。
5 デンプン質のようなものも確認されます。
以上の所見をまとめてみます。
・グラム陽性のレンサ球菌が多数あります。連鎖は長いものも多く、肺炎球菌ではなさそうです。
・多核白血球が優位にありません。扁平上皮も散在しており白血球と同数あります。痰の採取不良も考えられます。
・人以外の大きな細胞が確認されます。また、デンプン質のようなものも一緒に確認があります。
・黄褐色の結晶成分があり、胆汁様のものも推定できます。
洗浄喀痰にも関わらず口腔内細菌を多く認め、上皮の確認もあります。この患者が飲み込んだものの中に食事由来のものも混在し、一度胃に到達したものであるが、何らかの原因で逆流性誤嚥を起こし、嚥下のタイミングで下肺まで唾液や消化液が落ち込んだ可能性も示唆(Menderson症候群)されます。
患者の背景と胸部陰影と合わせると、誤嚥性肺炎でグラム陰性桿菌が少ないことがわかります。抗生剤の投与が必要かどうかここでは分かりにくいですが、必要と判断される場合はSBT/ABPCやABPCのみという狭域抗菌薬だけで乗り切れるような気がします。
連休で心配なので広域抗菌薬に頼りがちでしょうが、グラム染色はあなたの診療を助けます。是非覚えておくことをお勧めします。

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2019年2月 5日 (火)

第30回日本臨床微生物学会にて話ていたプライドのこと

先日開催された第30回日本臨床微生物学会総会・学術集会に参加してきました。初日から色々な企画が盛り沢山で皆さんは聞きたいものも聞けなかったと思います。

師範手前も最後の最後で壇上に上がる機会を作って貰いましたが、すでに開始前から会場前は大混雑でした。会場に入れなかった皆様、主催者に代わり深謝させて貰います。人気者ですいません。
学会事務局より当日は本ブログに沿って話をしてくださいとのことでしたので、微生物検査技師としてのプライドを医師へのメッセージとしてプレゼンテーションしました。
ところで、「プライドってなんだろう?」 って考えながら作りましたが。
皆さんも微生物検査に誇りを持って何か医師へメッセージを送るとしたら何を伝えますか?
そう考えると、なかなか難しいことのように思いますが、そうではありません。毎日、どのような考えを持って仕事に直面しているのか? その考えをまとめることが大切です。
当たり前ですが、仕事は自分の生活のためにするものです。
自分のした仕事の対価を収入として貰っていることを忘れてはいけません。
仕事があるのは、患者がいるからで、検体をオーダーしてくれる医師がいるからです。
我々の知識は色々な患者から採取される色々な検体から成り立っているため、患者に育てて貰っていることは忘れてはなりません。なので、自分のベストを尽くし患者へ結果をフィードバックすることは必須事項です。直接治療にはタッチできませんので、医師を介して治療に関わることができます。つまり、自分の成果は患者の上に成り立っており、ベストを尽くすことが必要だということがわかります。
例えば喀痰のrejection criteriaがありますが、外観上質が悪い喀痰だからって全てrejectして良いのか?という問題があります。
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唾液の中に少しでも膿性部分があればそれを上手にかきとりグラム染色をすることをしなければなりません。洗浄しても上手く分離できない場合もありますが、例えば爪楊枝を使い膿性部分のみをかきとる技術こそが微生物検査技師としてのプライドの一つではないかと考えています。
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また、質の悪い喀痰がある場合は、品質評価が悪いと表示するだけでなく、悪い喀痰である理由と、その結果が培養に与える影響についてもしっかりとコメントできなければなりません。胸部Xpで浸潤影がない唾液性の喀痰であれば尚更そのコメントが必要で、耐性菌が検出されたら治療してしまえと思うかもしれません。グラム染色はAMR対策に本当に一役買って出る検査の一つなんだからしっかりとコメントできる時はしなければなりません。
38 見るからに悪い喀痰。
39 コメント例。
当日はそんな微生物検査技師としてのプライドをどう持と仕事に向き合うのか?について少しの時間お話をしました。皆さんも頑張っていきましょうね。
また、どこかの機会で同じような話ができれば幸いです。

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2019年1月 1日 (火)

先日書いた記事の解釈について

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

もう直ぐ本が出版され、売れ行きが非常に気になって毎日ランキングを見るようになりました。せっかく作ったのに売れ残りがあると良くないですので。
さて、先日の記事についてです。
COPDと心不全を基礎疾患に持つ患者が誤嚥性肺炎を疑われ入院となった症例ですが、経過も良く初期治療の評価を行い抗菌薬の処方内容について検討を行うというものです。
培養結果としてPantoea agglomeransが検出されていましたが、このPantoeaはもともとEnterobacterに属した菌で医療関連感染(特にデバイス関連の感染)を起こすことがあります。3世代セフェム耐性は稀です。肺炎は比較的まれですので、この菌で肺炎を起こす患者かどうか考えることが大事です。全く起こさないわけではないですが、元々自宅で過ごしていた患者なので肺炎の原因菌としてが下位にきます。ここを念頭に置いてグラム染色と合わせて考えます。
入院当日の喀痰グラム染色はどうでしょうか?
まずは弱拡大(100倍)ですが、この倍率では材料評価を行うと同時に、どのようなものが混在しているか確認をします。
20181214_183616_2
材料評価はGeckler分類で行いますが、この材料はGrade2になります。
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四角い上皮が扁平上皮で1視野に25個以上あり、扁平上皮と比べて半分以下の丸みを帯びたものが白血球で10〜25個になるからです。
つまり材料として良くありません。これは採取条件が悪い(唾液が大量に混入してしまった)のか、元々膿性痰がでない患者なのかの確認が必要です。そのため、入院時の喀痰がどういったものなのかの確認が必要です。もしくは検査室では洗浄喀痰をしっかりとグラム染色に使っているのか確認も大切です。
確認したところ洗浄喀痰ではないことが判明しました。また、画像の中央部には抜けて見える物質があります。これは脂肪やグリコーゲンでありご縁を示唆する物質の一つです。つまり唾液を多く含んだ検体であることがわかります。
次に強拡大(1000倍)です。
20181214_184156_2
多核白血球がほとんどなく、Viridans group Streptococcusと思われる口腔内常在菌が多数ある。
20181214_183954_2
多核白血球も散見されるがpolymicrobial patternもなく誤嚥性肺炎を伺う所見が無い。ただし白血球は多く認めるので炎症所見として捉えることはできます。
グラム染色所見では上記の解釈になります。培養でも優位な菌はなく、肺炎治療のために抗菌薬継続が必要なのか疑問が残ります。合わせて心不全の状態も良くなりつつある。心不全による肺水腫では心不全細胞も出現することがありますが、今回は認めませんでしたので慢性的に心不全がひどい状態ではないと考えることもできます。
以上の結果よりTAZ/PIPCはどうするのかですが
①緑膿菌などの広域抗菌薬耐性菌の検出は無いこと。
②誤嚥性肺炎と思われたが心不全が原因の呼吸不全の可能性が高い
③口腔内常在菌が多量に混在しているだけで痰ではなかった可能性あり。もしくは喀痰は主訴ではなかった。

これらを考慮して抗菌薬は終了するか、de-escalationを行いSBT/ABPCへと変更して、しばらく経過を見ていくことになると思います。どちらにしても呼吸器症状の休息な改善が行われていれば現在の治療方針を継続することになるのですが、抗菌薬適正化に向けてグラム染色を駆使することはAMR対策として重要と考えます。

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2018年12月14日 (金)

グラム染色はどこまで使えるのか?

師走ですね。

4月に新入職した皆さんは、もうグラム染色は自由にできますか?
一体、グラム染色なんて菌が見えてりゃ抗生剤は広域で始めたら良いんだろう?って安易に思っていませんか?
グラム染色は菌や背景から考える病態まで行える優れものです。また、菌が見えても感染症じゃないよなって思う場合は抗菌薬を積極的に使わないで良い場面はあると思います。
こういうのはどうでしょうか?
心不全、COPDを既往に持つ90代の男性。5日前から全身倦怠感を自覚していたが徐々に悪化。本日、呼吸困難感を主訴に救急搬送された。喀痰の貯留を認め、胸部Xpで両下肺野の浸潤影、両側胸水を認め、同部位にwheezeも認めた為、肺炎と診断され入院となった。
両側下肺野は誤嚥性肺炎を疑う。
両側胸水は心陰影拡大あり、BNP高値もあり心不全性の可能性。
医療曝露も多いのでTAZ/PIPCで加療開始となった。
4日後の状態は利尿も進み、心不全については経過良好。 喀痰培養からPantoea agglomerans(1+)、Nomal flora(3+)。
解熱も測れ、呼吸症状も改善を認めた。
もともと、誤嚥性肺炎を疑っていたが経過から心不全に伴う両側胸水と無気肺の疑いが強くなったためde-escalationを図ることとなった。
入院時の喀痰グラム染色は以下のような内容、あなたならこのスメアをどう解釈しますか?そして抗菌薬はどうしましょう?そもそも必要でしょうか?
Dsc_2798 100倍
Dsc_2802 1000倍
Dsc_2801 1000倍
What's your diagnosis?

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2018年12月10日 (月)

ブログを書籍化します

更新がほとんどできませんですいません。

長年の時を超えてブログが書籍化します。
まずは喀痰だけにフォーカスを絞っています。
Photo
書籍は非常にコンパクトで、白衣のポケットにもすっぽり、ハンドバックにもすっぽり、満員電車で読んでも迷惑にならない、乗り換え時間を気にしなくても大丈夫
などなど。 1単元が5分程度で読めると思います。
一番の魅力は菌種推定とその菌が見えた時にどう考えるのか?病態把握まで含まれた内容です。
誤嚥性肺炎かどうかわかるのか?
肺膿瘍と誤嚥性肺炎は像が違うのか?
貪食って結局どうよ?
などなど。11年間の中で呼吸器感染症を中心にまとめています。
少し高めですが、電子版もついてこの値段なのでお得だと思います。
年末のボーナスで1冊どうですか?
発売は1月23日を予定しています。
翌週の微生物学会でも販売があるようですのでよろしくお願いします。
既にサインの申し込みもあります。学会場で見かけたら声を掛けてください。

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