2016年9月22日 (木)

菌の擬食化

皆様、更新が遅くなりましてすいません。

別にサボっていた訳ではありませんが、ブログを書く時間が少し無かっただけです。
簡単な呟きであればFACEBOOK版がありますのでまた機会があれば見てください。
さて、今回はためになるかどうか分からない情報です。

https://www.facebook.com/GramStainGym/

菌の擬人化というものは沢山ありますが、今回はN大のN井先生のご要望もあり、なんと擬人化では無く、菌を擬食化してみました。如何ですか?この芸術作品は。

グラム染色像を相手に伝えるのは難しいですよね。


あ~あの形、こういう形といっても中々伝わらない。何か印象的な形象を伝えたい、そう思ったことはありませんか?

そういうお助けアイテムとして今回は代表的な染色像について食物に例えてみました。
まずはブドウ球菌。よく分離されるものとしてStaphylococcusとMicrococcusがありますが、経験上このような染色像に違いがあります。

何と言っても黄色ブドウ球菌は菌体外毒素やフィブリンの影響もあり菌や菌体周囲が赤く見えるのが特徴的ですね。

また、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)は菌種によって大きさが少し違うのが特徴です。Micrococcusは2つもしくは4つのものが多く見え、菌はStaphylococcusと比べてやや大きめです。

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次に表現しにくいグラム陰性桿菌。N井先生のご要望でソーセージに例えて違いを検討してみました。

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やはり、E. coliやKlebsiellaなど腸内細菌群は直線状に見えることが特徴的ですが、緑膿菌はやや湾曲して見えることがあります。Acinetobacterは球菌状に見えることが多いですが、たまに陰性桿菌として見えます。Klebsiellaはアメリカンドッグのように菌周囲に莢膜があるのが特徴です。Klebsiellaの莢膜過剰産生菌の場合はやや大きめのアメリカンドッグでしょうか。ストリングテスト陽性なのはこの菌かどうかの鑑別の一つですね。

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ブドウ糖非発酵菌ではStenotrphomonas maltophiliaは緑膿菌と少し違い菌が集塊を作ることが少ないように思います。緑膿菌の大きな特徴はバイオフィルム。恐らくバイオフィルムはこのように水(βラクタム薬)を通すことがないのでしょうね。

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最後に防御機構ですが、貪食像はこんな感じでしょうか。美味しそう。

βラクタムはPBPに作用するので菌の中央部から形状変化(バルジ化、もしくはフィブロブラスト化)するのでこんな感じでしょうか。

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こうしてみると何となく身近に思えますね。
しかしバカですね(笑)。

たまにはリラックスして仕事しましょうね。

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2016年8月26日 (金)

医学生も微生物検査室に行こう

先日、定期的に参加している外部のカンファレンスで一つ提案を頂きました。


「医学生も微生物検査室に行って欲しいけど、中々説明が上手くいかず重要性について理解してくれない学生が多い。何を学習できるか教えて欲しい。」
医学生を経験していない私なので少しズレているかもしれませんが、息子の意見も参考に自分なりに考えてみた。

1.微生物の検出をするのは微生物検査室である
病原微生物の検出をすることは、感染症の原因微生物を特定することです。ここで言葉として出てくるのが臨床微生物学と感染症学の2つです。少し整理してみることにする。

①臨床微生物学とは
感染症の診断のために必要な検査とその治療方針の決定で、起因微生物を特定し、感受性検査を参考に治療方針を開発する学問。英語ではClinical Microbiologyである。

②感染症学とは
臨床微生物学とは画線を引いた、あくまでも病原微生物により引く起こされる患者の病態解析とその診断および治療法についての学問のこと。あまりキレイに書かれているものがありません。英語ではInfectious Diseaseである。

日本ではこの2つが同じような意味を持つように解釈される場面があるが、①は検査診断学で②は診断学なので意味が違う。

そのためか、感染症の診断=病原微生物の検出 という感覚で感染症診療に望んでいる若い医師を見る機会が多いが、病原微生物の検出は診察室や病室でしているのでは無く、検査室で行っていることを忘れて欲しくないと思っています。当院では研修医ローテーションで微生物検査室が選択できることもあり、実際ローテートで回ってきた研修医には感染症診断というより、臨床微生物学を中心に感染症診療について説明をする。

何度も言いますが、病原微生物の検出は診察室や病室でしているのでは無く、検査室で行っているため、医学生も微生物検査室に訪問して病原微生物に触れることで、微生物検出のためのプロセス、感受性検査の解釈、耐性菌など最新の情報について知ることができる。

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2.医学生の教育と実際の臨床現場のニーズ
日本の医学部教育は臓器別に行い、臓器横断的な内容に乏しい。そのため、臨床現場に直接参加できる体制づくりができていないため、学生自らが課題を持ち学生生活を送らなければ、初期研修医時には系統的な感染症診断を行うだけの力がついていることは無く、微生物検査室と疎遠であれば、ほぼ永久的に良質な感染症診療を行うことは無いのであろう。そのため臨床感染症を学ぶために感染症専門医の門戸を叩き、感染症診療の原則に基づいた修練を展開していく中で、微生物検査に触れる機会も多くなる。
やはり感染症学と臨床微生物学は切っても切れない存在だと思う。

参考文献)大曲貴夫:感染症診療における検査室の役割(モダンメディア)
3.プロセスを知ることができる分かる。
微生物検査は生化学や血液検査とは違い機械化が進んでいない。また微生物の増殖に影響を受けるため結果が日単位で進む。そのため今診断し、治療方針を決定する上で結果が出ていないことは大きな障害となる。

今分かることは材料から直接グラム染色をして主たる微生物を確認し、それに応じた抗生剤を絞り込むことが必要である。同定・感受性には3日ほど時間がかかるが、最終同定までにはある程度起炎菌は絞り込めることがある。例えば緑膿菌と腸内細菌(例えばKlebsiella)は同じ陰性桿菌であるが、形態も培地上のコロニー性状も全くことなるので、初期治療選択の翌日に緑膿菌に活性の無い抗生剤で開始していた場合は翌日修正できる。初期治療薬の絞込みや途中経過を知り選択した抗生剤の妥当性について検討することは患者の予後にも繋がる上に、広域抗菌薬の乱用を防ぐこともできる。

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4.効率を求めるアメリカとそうでない日本
アメリカの医療は効率を期待することが大きく、これは医療費が膨大になることを防ぐ理由の一つでもある。診療のみならず微生物検査についても同じで、材料の質が悪い検査は行わないことがある。また、グラム染色は臨床検査技師の特権であり、他職種は法的な理由がありすることが出来ない。

日本はどうか。そこまで効率を極める検査は行われていない。検査材料については来るものを拒まず行い、唾液から出たMRSAをVCMで治療するという行為は日常的に良くある。グラム染色は臨床検査技師のみならず、医師や初期研修医、薬剤師なども行うことができ、実際診療に活かしていることも見かける。

しかし、最近の日本の医療ではDPCの導入など効率化についても言及される場面も多くなってきている。そのため微生物検査の位置づけは重要である。

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グラム染色では抗生剤を絞ることなんて難しいでしょう?と未だに思っている学生も多いでしょうし、そもそもグラム染色を使い初期治療をより確実なものにできると教育を受けている2年生や3年生は殆どいないと思う。

学生でもグラム染色はできるが、技術習得には環境を自ら整える必要がある。染色操作や顕微鏡の観察方法などもそうであるが、学生の間に微生物検査室を訪問し、スキルを高めておくことは将来の診療に大きな財産となるに違いない。

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医学生の皆様へ、5年生と6年生で病院研修を行う時は微生物検査室も是非研修に行ってください。勉強がんばって。

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2016年8月11日 (木)

喀痰グラム染色はここまで分かることがある

当院でグラム染色至急と言えば、喀痰と尿と関節液。

それぞれ採取してから30分以内を目処に報告をしています。

喀痰グラム染色所見は抗生剤の選択をする上で重要ですが、当院では病態も含めてコメントをすることがあります。

例えば、2週間ほど咳が止まらないという主訴で来院する患者ですが、痰切れが悪いということがわかり喀痰グラム染色のオーダーがあります。

「喀痰グラム染色所見を見て頂きたいのですが・・・」という依頼でやってきますが、所見として見る点は以下のとおりです。

①喀痰として適切に採取されているものかどうかの判断。
②①であれば多核白血球が多いかどうか。
③②の時には白血球の種類と量(どれが多いか)、核が明瞭か否か(不明瞭な場合は古いことを示します)。
④多核白血球優位の場合は微生物が居るかいないか確認する。微生物の確認があれば優位な微生物についてコメントをする。

例えば下記の場合はこのように言います。
「多核白血球が優位にあり、グラム陽性双球菌があり肺炎球菌を疑います。一部莢膜形成もありますので間違い無いと思います。貪食像は少なめですが見られます。」

→肺炎球菌性肺炎を示唆する所見としてコメントします。

4 喀痰1000倍

オーソドックスですが、的確なコメント内容だと思います。
しかし、菌が見えない場合はどうしましょう?

咳や痰が出るので出す場合がありますが、下記の場合はどうしましょう?

2 3 喀痰1000倍

このスメアから分かるのは、多核白血球は少ないが存在すること、フィブリン糸のような線状うの物質に絡みあうようにすりガラス状の粘液糸が確認される。上皮でも線毛上皮が多く見られ、マイコプラズマ肺炎のような異型肺炎を疑います。多くがマクロライドやテトラサイクリンの投与が検討されます。

CLINICAL MICROBIOLOGY REVIEWS, Oct. 2004, p. 697–728

この場合は粘液糸とフィブリン糸の交錯がポイントになります。
また、このようなスメアはどうしましょう?

今度は白血球はありますし、線毛上皮や粘液糸はありますが、フィブリン糸はありません。

これは気管支喘息の悪化に伴う像です。慢性炎症に出てくるマクロファージも見えます。少しマイコプラズマ肺炎とは異なる像です。

Photo_3 2_3 1000倍

また、気管支喘息の場合は肺実質に炎症所見が無いことがあり、胸部X線はキレイなことが多いと思いますので、マイコプラズマ肺炎じゃないと予想は付きます。こういう場合は抗生剤処方を一時見合わせて経過をみていくようです。

このようにグラム染色で病態把握をすることでより診断に近いものになります。

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2016年7月25日 (月)

秋田にて

7月23日の土曜日は秋田県臨床検査技師会でお話させて頂きました。

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人生初の秋田県でした。念願のスーパーこまちにも乗車できてテンションマックスで伺いました。

Photo念願のスーパーこまち(秋田駅)

さて、講演内容は秋田小町さんの要望もあり、初級者でも分かりやすい内容をお願いされていましたので、喀痰と尿のみ話をさせて頂きました。

とは言っても、毎回そうですが喀痰の話は1時間では終わりませんで、タイトな内容となってしまいました。

講演は2時間も時間を頂きまして、グラム染色の基礎(30%)+喀痰(50%)+尿(20%)という構成です。グラム染色の基礎では、染色時の注意事項、一般的な報告方法。喀痰と尿については検体を頂いてから鏡検が終わるまでのプロセスについてケースを交えながら話を進めていきました。

例えば、グラム染色だけでは重症かどうか、急ぐ症例かどうか分かりにくいことが多いのですが、色々な検体を処理しているうちで「あ、これ急ぐよね。」というのが混じってきます。あまり見かけない菌が見えた場合は当たり前は当たり前ですが、普段よく見ますが、ここの材料からは出てこないよなという症例もその一つです。
混濁した髄液が出てくれば誰でも急ぐことは分かりますよね。

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こういう症例は、帰る間際であったり、週末でバタバタしている時間に限ってきませんか?

今日、忘年会なんだよね~。だから結果は明日で良いかな?なんて思う人は居ないとおもいます。きっと採取した現場では何でも良いから早く結果が欲しいと思っているに違いありません。髄液穿刺は来院して直ぐ抜く場合もありますが、大方データが揃ったり診断が終わりの方に出てくることも多く、既に時間が経過していることもあり、結果は早く欲しいところです。うちでこれほど濁った髄液の場合は、最初に遠心せずに塗抹を作成し、後に沈渣の塗抹を塗ります。遠心せずに直接塗抹を作成して菌が見えたら早く診断に繋がるからです。

当日はノカルジア肺炎+膿胸とMRSAの腹腔内感染などについて説明していきました。

【ノカルジアはなぜ急ぐか】
検出が稀なので、遭遇する症例として稀になります。検査室で「おー、写真撮らなきゃ。」では無く、これは「非コモンなので、結果急ぎそう。」になります。検査室では何回か見ても、医師に取っては千載一遇です。また、菌の形が類似のActinomycesはペニシリンが第一選択ですが、ノカルジアはβ-ラクタマーゼ産生するのでペニシリン耐性になります。これこそ、キニオン染色が大きな影響力を持つことになります。

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【MRSAの腹腔内感染】
横隔膜下臓器では、腸内細菌科の感染が多くなります。また、手術や悪性腫瘍に関連した疾患の場合は緑膿菌などのブドウ糖非発酵菌のリスクが高くなります。つまり、菌が判明していない場合は緑膿菌と腸内細菌科を中心とした治療が先行することが多くなります。

グラム陽性球菌やCandidaについては最初から想定していないことが多いと思います。そこで、このようなグラム陽性球菌Cluster形成のある場合はどうでしょうか?やや小型のClusterで貪食多数であればS. aureusの可能性が高いと考えることができます。また、MRSAのキャリアであればMRSAの可能性は高まり、ブロードなβ-ラクタムであっても効果が無いかもしれないことが分かります。つまり、普段は遭遇するのですが、そこの部位から出にくい菌であれば、初期治療薬でカバーできていないことがあり、報告が早い方が良いのです。

【喀痰の解説】
喀痰の解説はいつも肺の解剖学的な内容と喀痰の成因をベースに塗抹像の解説をしていきます。いつも、菌の接着部位とそこから出てくる体液との関係、グラム染色像の特徴を整理して話します。

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また、患者の状態が悪い時に出てきた菌の臨床的意義はどう解釈するのか?貪食像は全て治療対象なのか?という内容に触れました。喀痰中のCandidaは貪食していても殆ど肺炎の原因とはならないという内容を取り上げました。

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また医師にはどういった内容を伝えると効果的なのか、メッセージ性の強い報告を端的に済ませるにはどういう内容で話すれば良いのか?など、普段、自分自身相談を沢山貰う中でまとめたことについて話を交えました。
4_2 まだまだこれ以上にあると思います。

最後に、懇親会もして頂きました。

普段、悪いことばかりしている私に、なまはげは温かく迎えてくれました。
また、Kさんに教えて頂きました ババヘラアイス は美味しく頂きました。

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秋田の皆さんは本当に熱い方が多く、良い刺激を頂きました。
秋田の皆さんお世話になりました。

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2016年7月 6日 (水)

血液培養からブドウ球菌が出たら全てCEZ+VCMなのか?

皆様、この1ヶ月間お休みしておりました。
更新が無いのでブログ愛好家が減ってしまいそうです。
皆様、今後とも宜しくお願いします。

今日は、先日研究会で報告させて頂いた内容について紹介します。

血液培養が陽性になり、グラム染色をするとグラム陽性球菌でクラスター形成が確認された。推定菌はStaphylococcusですが、気になるのがMRSAですよね。

Cvmrsa4 ☓1000(血液培養)

血液培養陽性時の処理は以下のような行程です。

血液培養陽性→サブカルチャー(寒天培地に分離)→18時間培養→コロニー形成→同定・感受性開始→18時間→結果判定

になります。既に血液培養陽性になるまでに18時間程度掛かるので、血液培養採取して結果が得られるまでは54時間程度かかります。

Mecapcr  

通常はグラム染色所見での介入、培養での中間報告、同定感受性検査結果報告時の3箇所で介入を行いますが、PCRを用いた場合は殆どの症例でグラム染色+mecAの結果の1箇所のみで介入が終了します。

じゃあ、最初からMRSAを想定して何でもかでもMEPM+VCMでカバーするのは理にかなっているかもしれませんが、なんだかしっくりいきませね。

だったら、血液培養陽性後直ぐにS. aureusかコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)かくらい分けれんもんかな?と思いますが、最近では質量分析機器を用いた菌種同定も病院検査室に導入が進んできて1時間程度で同定ができるようになりました。しかし、うちもその一つなのですが、かなりの高額機器なので導入できていないところが多いです。早く欲しい。

質量分析機器が無くても、グラム染色所見だけでS. aureusかCNSか分けることも可能な場合があります。

 ・バクテアラートを使用:感度89%、特異度98%(J Clin Pathol 2004;57:199–20)

 ・バックテックを使用:陽性予測値は 90%,陽性尤度比 11.4(感染症学雑誌 2008,82:656-657)

まあ、90%程度は判断ができそうです。

Cvmrsa2 ちょっと赤いS. aureus(バクテアラートSA)

1 赤くなく、少し大きめのCNS(バクテアラートSA)

しかし、S. aureusと分かっても肝心のMRSAかどうか分からないですよね。

S. aureusだし、コンタミネーションの可能性も少ないし、MRSA考えて一先ずはCEZ+VCMを使用してみようか?という風になりますかね。

通常、感受性をすると丸2日掛かりますが、早めに感受性結果が分からないものか?

→血液培養液を使って感受性を直接することも出来ますが、感受性をするにしても、そこから1日は掛かるので明日まではCEZ+VCMを入れることになります。感受性判明時にはCEZかVCMのどちらかが無駄になってしまいますが背に腹は代えられない状況です。

長くなりましたが、今回は、この状況でmecA(MRSAの耐性遺伝子)を調べて治療薬の選択を早期に検討を行えば、どの程度処方に影響が出てくるか、コスト面を中心に考えてみました。mecAと同時にS. aureusの判定も同時に可能なPCRを用いました。

PCRにかかる時間はたったの35分。血液培養のグラム染色をしてから1時間程度でMRSAかどうかの判定は可能です。

血液培養でS. aureusが検出された20例を対象としました。2例はコンタミネーションとなったので、最終的には18例となりました。MRSAは6例、MSSAは12例です。

・MRSA6例のうち5例はβラクタムが初期治療で使用されていた。

・MSSA12例のうち1例で抗MRSA薬を使用していた。

つまり、初期治療後から血液培養陽性後のPCR検査結果まで18例中の6例で不必要な抗生剤が投与されていたことになります。まあ、最初からMRSAが出ると思って、最初からVCMも投与すること無いので当然の結果と思います。

当院は血液培養を採取したら夜間・休日を問わず検査室に送り培養を開始しますので、血液培養採取から陽性までの平均時間は15時間です。そこから処方薬の検討が行われるまで少し時間がかかります(陽性確認から報告・介入までの平均時間は2時間)ので、その間に不適切な抗生剤にかかるコストはMRSA1例あたり2700円程度、MSSA1例あたり451円でした。初期治療でβ-ラクタムを処方する機会が多いのでMRSAの場合は全て不適切になってしまいますね。

そしてS. aureusと判明したのでCEZ+VCMに変更すると過程して

①同定・感受性が終わるまでCEZ+VCMを併用する

②その場でmecAを調べてCEZもしくはVCMのどちらか選択をする

この①と②を比較するとmecAを測定した方が37万円コストが下る(MRSAの場合は1人あたり4000円、MSSAの場合は1名当たり32000円のコスト削減)結果となりました。

13533138_1042372725843935_323498838 当日ボツにしたスライドです。

mecAをすることで適切な抗生剤を早期に選択できることに加えて、余分な抗生剤処方を減らすことが図れました。

ちなみに追加でCNSも10例検討していたので、グラム染色を用いてのS. auresかCNSかの鑑別は感度99%、特異度100%となりました。S. aureusで1例でmiss readingがありました。個人的にはMALDI-TOF MSから頂いた、眼LDI-TOFということで高い検査技術の提供ができました。

PCRはCNSでも行っていますが、CNSと判明した時点でコンタミネーションの判断が早くできたので処方されずに経過観察で済んだ症例は半分以上ありました。ここでも余分な処方薬を減らすことができました。

結局、血液培養ではStaphylococcusが確認された場合は、グラム染色をしてS. aureusかどうかの菌種推定するのと、mecA遺伝子の測定をしてMRSAかどうかの確認をすることで十分に対応ができそうに感じました。菌種同定のみでは処方薬の変更は難しい局面も出てくるでしょうね。

しかし、質量分析機器を使うことで推定では無く、確定菌種を報告できることは大きなメリットであり、今は入っていませんが、もし導入が進めば検討してコストの計算をしていこうと思います。

さらに詳しい結果は、何らかの形で報告させて頂く予定です。

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