2012年1月24日 (火)

朗報です? 学会で聞けなかったあなたへ 常在菌と起炎菌との鑑別

第23回日本臨床微生物学会総会が終了しました。

参加された皆様お疲れ様でした。また、参加出来なかった方々残念です。

さて、当日は勤務の都合上、家庭の都合上、京浜東北線が止まっていた都合などシンポジウムで聞けなかった方たちのために当日のスライドをこっそりお見せしたいと思います。

サービス精神満点ですが、特別ですよ。下記のURLからダウンロード可能としました。少し当日お見せしていないものもあります。

http://firestorage.jp/download/d7525ee4bd44a7e9867e94e733a7a989d4ced974

ただし、ダウンロードした方々には条件を与えます。

1)グラム染色の技術を向上させる努力を惜しまないこと

2)営利目的に活用することは避けること(小規模の勉強会には活用しても構わないと思います)

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当日は、常在菌と起炎菌との区別をグラム染色を通して出来るのか?について考えました。

1)上皮に付着していたり、あちこちに集塊状になっている菌は常在菌と思われるため判る。極力菌にカウントしない方が良い。

2)誤嚥性肺炎は外観上膿性でありながら、グラム染色上で扁平上皮が多く、また核の不明瞭な白血球に加えて、多菌種の貪食が確認される。

3)貪食像=起炎菌という判断は短絡的であり、MRSAの場合は貪食を指標にすると感染者が以上に増えるため抗菌薬適正使用から逸脱する場合がある。しかし、誤嚥性肺炎では貪食像は起炎菌の指標の一つになるうる場合がある。ただし、minor criteriaである。

4)誤嚥性肺炎像を見た場合は喀痰の場合は誤嚥性肺炎の可能性が高いが、吸引痰の場合はそうとは言えない。

5)そもそも、グラム染色をしない肺炎の診療は、レントゲンを撮影せずに肺炎の診断をするのと同じだと思う。

6)うちでは、所見を詳しく紹介するために画像紹介を追加した。

などなど、ブログでは語れません。

臨床医とコンタクトを取る、自分で喀痰グラム染色との比較をする、翌日培養結果との照合(上書きはしない)をして次回の診療に繋げる。などこれからの日本の医療を考えたうえではグラム染色を基本にした肺炎治療は必要不可欠と思います。

下記はスライドの一枚目です。pureな肺炎球菌性肺炎を知らないとモグリですが、誤嚥像や誤嚥性肺炎に伴う肺炎球菌を確認出来るようになれば本当に診療は楽になるでしょうという下りです。

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2012年1月16日 (月)

リアル道場

グラム染色の結果をカルテ上に残す時はどうしても文字主体の報告になってしまい味気ないですよね。

私は普段から報告書以外にも、経過記録の欄にグラム染色結果を記載しております(当院は未だ紙カルテなのでボールペンによる書き込みになります)。

また、細菌検査の結果にはグラム陽性球菌が○+とか、単純な報告しか書けませんし、推定菌の報告も20KBとの勝負で、言葉も考えないといけませんでした。20KBってtwitterの150文字どころの問題ではありません。

そんな味気無いグラム染色の報告をどうにかしたいと思い報告するシステムを構築しました。

その名は、ズバリ『リアル道場』って勝手に書きましたが。

有用かどうか判りませんけど、既に何人かの人から見ていると伺っています。ちょっぴり嬉しい。全ての症例は難しいですが、コンサル頂いた症例、血液培養陽性例、推定起炎菌はこれで決まりというものを中心に掲載しています。

これで少し悩み解決です。本当にグラム染色の読みは難しいですが、これで解説することにより少しましになればと思います。

余談ですが、今週は臨床微生物学会です。http://www.congre.co.jp/jscm2012/

少し難しい命題を頂きましたが、上手く話せると思います。ちょっと乱暴かもしれませんが当日宜しくお願いします。

では、学会場でお会いしましょう。

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2012年1月11日 (水)

やっぱりグラム染色は抗菌薬の適正使用に欠かせない その1

こんな状況に皆さん遭遇するでしょうか?

脳外科医:今、手術でこんなの採れたけど、合う抗生剤の情報が欲しいんだ。

私:脳膿瘍ですか?それとも硬膜外膿瘍ですか?、または術後の方?

脳外科医:神経症状がはっきり無い患者だけど、MRIでリング状の造影効果があるので脳膿瘍に間違い無いんです。外傷後や手術後ではありません。

私:じゃあ、採取時の特徴は何かありますか?

脳外科医:臭いは特に無く、膿瘍の周囲にガスを認めたくらいです。

私:そうですか。最後に抗菌薬の前投与はありますか?MRI撮影後なので。

脳外科医:はい。他院から転送されてきましたが、既にCTRXが数日間投与されていたようです。血液培養は一応出したのですが。結果未だですよね。

私:判りました。スメアは10分後に報告しますので、しばしお待ちください。

まず、この時点でどういったスメアを期待するのか?菌が出てくる場合はどういうものが見えるのか、まず頭の中を整理するのが大切です。

たとえば陽性菌か陰性菌かです。

特に、脳膿瘍などの重症化した疾患には本当に迅速に原因菌の検索が必要になると思います。

今回は手術や外傷のような創傷に伴う感染では無いので、ある程度菌が絞られます。やはりコミュニケーションは大事です。

で、見えたのが下記。

うーんと思いますが、どういった菌が予測され、この菌が原因菌である場合は、結果報告する際に何かアセスメントすべき事項はあるでしょうか?

たまに問題を出さないとマンネリ化するので、今回は問題にしました。

一応答えはその2で作る予定です。忘れていたら指摘下さい。

10001 ×1000(その1) 10002 ×1000(その2)

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2011年12月30日 (金)

粟粒結核と結核菌検査について

年末年始の忙しい時期ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

私は丁度システム更新と重なりまして、立ち会いに細菌当番、当直と休みが一つも無い正月を迎えております。

さて、先日のグラム染色カンファレンスでは粟粒結核の症例もありました。時間の都合もあり検査についてはゆっくり時間が取れなかったため残念に思われてる方々も多かったと思います。ちょっと追加でコメントをさせて頂くことにします。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/11-33b5.html

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/11-9c9f.html

1)粟粒結核についての簡単な説明

粟粒結核とは『結核菌が血行性に播種し、少なくとも2臓器以上に粟粒状の結核病巣がびまん性に散布されているもの』であり、初感染後に血行性播種による早期蔓延型と初感染後ある程度時間が経過してから再燃し血行性に播種する晩期蔓延型に区別される。現在の粟粒結核は後者の晩期蔓延型が多く発生しています。

昔から問題になっていたのは小児の初発感染後の粟粒結核でしたが、BCGを乳児期に接種することで、発症予防になっている可能性が示唆され、発生数は毎年1人程度と低い水準に推移してきました。しかし、成人例では2009年には150症例の報告があり、少し増えてきている傾向にあるようです。

発生要因は宿主の免疫低下であり、血液疾患、悪性腫瘍、免疫抑制剤の服用、ステロイドの使用、糖尿病など様々で、最近では医原性によるものが増えています。

2)粟粒結核の喀痰検査

さて、結核の診断で結核菌の分離は欠かせないものだと思います。分離する方法はいくつかあって、塗抹陽性、培養陽性やPCR陽性など一般的な検査であると思う。

一般的に肺結核が多くみられるため、喀痰検査は必須項目になると思います。

ところで、普通の肺結核では、喀痰からの塗抹陽性率は50-60%、培養陽性率は90%以上にもなります。PCRの陽性率は90%以上。ここで、考えておくことは、塗抹陽性とは結核菌かどうか確定しないこと、PCR陽性は生菌とは限らないこととPCRより培養検査の方が陽性率は高いことです。なので、喀痰塗抹が陰性でも結核、PCRが陰性でも結核ってのは普通にあることです。

粟粒結核時の喀痰塗抹陽性率は文献によって様々ですが14-36%という報告があります。一方、喀痰培養陽性率は43-76%という報告があり、通常の肺結核より塗抹培養検査で検出されないことがあることは知っておくべきことであります。当然、PCRも同様のことが言えるでしょう。

培養検査が最も検出感度が高いですが、知っての通り培養陽性になるまでの期間は数週間かかりますので早期診断には有用な検査であるとは言えません。

3)喀痰以外の検査材料

やはり、肺病変が多く見られるために喀痰で菌が証明されない場合は、気管支鏡検査は考えなければなりません。気管支洗浄液や肺生検による組織が検査材料になります。

また、胃液や便も喀痰の次に検査材料として採取してみると良い。

また、結核菌陽性率が高い生検材料は肝生検で66.7-100%という報がある。骨髄穿刺も33-86%という報告があるが、肝生検や肺生検に比べては検出率は低いようです。リンパ節生検と髄液穿刺も検査材料になります。

他には尿からの結核菌の証明が出来るため、生検する前に採取し検査することは意外に知られていないことなので、覚えておいた方が良いでしょう。

そもそも基本的な事ですが、結核の診断には1日1回で3日連続の喀痰検査は当たり前のことで、言うまでも無いと思います。

結核は本当にシリアスな場面が多くある感染症の一つですが、ほとんどの施設が外部委託に依存していると思います。外部委託されている施設は、どうしてそういう結果に導かれるのか?結核検査指針に従った検査方法なのか?培養判定はどのくらいの感覚で確認されているのか?など確認することも必要でしょうね。

下記、は漸く見えた結核菌です。元々菌量が少ないため蛍光染色は是非とも実施しておきたい検査ですよね。

1229 蛍光その1 1229_2 蛍光その2 1228 チールネルゼン 

参考文献)

・Tuberculosis Annual Report 2008 Series 3. Childhood TB Tuberculosis Surveillance Center, RIT, JATA

・Tuberculosis Annual Report 2009 Series 1. Summary of TB Notification Statistics in 2009 Tuberculosis Surveillance Center, RIT, JATA

・当院における粟粒結核の臨床的検討,感染症誌78:929~934,2004

・MEDICINE,Late generalized tuberculosis:A Clinical Pathology analysis and comparison of 100 cases in the preantibiotic and antibiotic eras,59,5,352-366.

・粟粒結核,結核,第4版,254-261.

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2011年12月16日 (金)

第11回神戸グラム染色カンファレンスが終わりました

昨日は第11回神戸グラム染色カンファレンスでした。

http://gram-stain-id.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/11-33b5.html

だいたい90名近くの参加者に来て頂けまして大変盛況で終了しました。ありがとうございます。

提示した症例3つはこのようなものでした(自分のメモ書きから転載)。

その1)82歳男性高齢者肺炎の1例

高齢者の誤嚥性肺炎症例で、結局培養でStreptococcus agalactiae(GBS)が出て原因菌と思われた事例でした。

ポイントは下記の通りでした

①グラム染色で連鎖球菌が多く見え、しかも二双性にも見える。診察に当たった研修医は肺炎球菌と思い込み、そのままABPC/SBTを選択。しかし、培養では肺炎球菌では無くGBSが生えてきた。類似している菌の鑑別はどうしようか

⇒染色所見の解説要点(師範手前自らさせて貰いました。)

やっぱり、肺炎球菌は市中肺炎時には外すことの出来ない原因菌で、知りたいのは誰しもあると思います。

A)肺炎球菌は二双性球菌+莢膜でそう思う習慣があるため、この形をしている菌を探す習慣が抜けない。なので、口腔内常在菌の中でも肺炎球菌に類似した菌を見つけると肺炎球菌と思い込んでしまう。

B)肺炎時に出てくる連鎖球菌として、GBS、ミレリ菌、嫌気性グラム陽性球菌を見せてどう鑑別するか解説した。

GBSはやや丸みがあり、連鎖が4-8連鎖のものが多い

嫌気性グラム陽性球菌(肺化膿症やVAPなどの時)は染まりが悪い、形が歪になり見える。

C)莢膜を探すなら、ここを見ろ!!的なことをコメント

通常、背景が白い場所では見えない事が多く、フィブリンが多く析出している場所で莢膜を探すのがコツ。貪食は認めない(莢膜は貪食回避するので)事がある。

D)教科書では見れない変わった肺炎球菌の一覧

莢膜が紅い、連鎖が長い、自己融解や貪食で菌の染まりが悪いなど

E)誤嚥像と思うPolymicrobial patternでもよく見りゃ肺炎球菌が判るスライド解

判らない場合は判らないで仕方ない。無理に肺炎球菌と決めつけない

F)悪い材料しか採取出来ないとか、誤嚥が酷くて、ハッキリとグラム染色像で肺炎球菌性肺炎の診断は尿中抗原の力を借りるしか無い。

集塊を作っている、扁平上皮に付着している菌は上気道に存在する菌がコンタミした可能性があるので参考にしない方がベター。

G)尿中抗原はperfectでは無い。感度はグラム染色の方が良い。偽陽性の問題もあり、患者情報を良く聞く。

偽陽性:ワクチン接種後5日間、小児で鼻咽頭大量保菌の場合、最近感染していた場合(抗原消失は数週間続くことがある)。

偽陰性:喀痰培養陽性でも尿中抗原は陰性、血液培養陽性でも尿中抗原陰性は存在する。発症後2日以内だと陰性化する場合がある。

莢膜の種類での陽性率は変わらない。

②初期抗菌薬の選択は妥当なのか?

A医療センターのO先生よりコメント

肺炎球菌にしても、GBSにしてもペニシリナーゼは出さないので、スルバクタム(SBT)は不要であろう。ペニシリン単剤で良いと考える。

K病院のO先生よりコメント

どうしても嫌気性菌を狙うのであればバクテロイデスのようなβ-ラクタマーゼを多量に出す菌が出ると意識する症例にはSBTを考える。

名言ですね。

その2)88歳高齢者肺炎の1例

粟粒結核でした。HRCT上で類似の画像所見が得られる疾患との鑑別と粟粒結核の診断について解説がありました。

その3)37歳MCTD患者の左下肢蜂窩織炎の1例

皮膚ノカルジア症でした。ノカルジアをグラム染色で見た時のポイント、皮膚ノカルジア症の治療と診断のポイントと疫学について解説がありました。

次回は2012年3月8日を予定しております。また近くに案内をさせて貰います。お時間のある方のご参加宜しくお願いします。また症例は公募形式を取ることにしましたので我こそはという方は発表宜しくお願いします。

写真は昨日のスライドです。

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